川崎市の介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で2014年11月、入所者の無職丑沢民雄さん(87=当時)をベランダから投げ落として殺害したとして、神奈川県警は15日、殺人の疑いで、横浜市の施設元職員今井隼人容疑者(23)を逮捕した。16日には、「殺そうと思ってやった」との趣旨の供述をしていることが分かった。

 逮捕容疑は14年11月3日午後11時ごろから同4日午前1時50分ごろまでの間、4階ベランダから突き落とし、内臓破裂で殺害した疑い。

 施設では同12月、他の入所者2人もベランダから転落死した。3人はいずれも身長150センチ台で、ベランダの手すりは高さ120センチだった。今井容疑者はいずれの時間帯にも勤務していた。

 県警は昨年5月、70代女性の居室から同年1月に現金2万5000円の入った財布を盗んだとして今井容疑者を窃盗容疑で逮捕。施設側は逮捕直後に今井容疑者を懲戒解雇処分とした。捜査関係者によると、この捜査の過程で県警は転落が相次いでいたことに気付き、今井容疑者の関与を調べた。

 医療関係者は「事件当時、この老人ホームは部屋数80で、夜間は原則、3人で対応していたということです。通常、夜勤で1人が見る最大人数は10人ぐらいが妥当とされています。利用者を見守り切れないどころか、職員同士を監視できないのも問題となります」と指摘する。

 それどころか、この老人ホームでは、昨年6月に入所者の女性に対し、4人の男性職員が代わる代わる「死ね」などの暴言とともに叩いたり、ベッドに放り投げるなどした虐待も発覚した。

「介護業界は求人が多くても定着率は低いです。仕事の割に給料が安いこともありますが、そもそも人格に問題があったりする人が少なくないのです。認知症の高齢者は食事をしても忘れるぐらいだから、何も覚えていないだろうと慢心して、ストレスの解消手段にしているような職員もいます」と同関係者は語った。