トマトは南米ペルー、エクアドル原産のナス科の1年生草本。16世紀に南米からヨーロッパへ伝えられ、観賞用にされていたが、18世紀になり、イタリア人が初めて食用にした。日本へは1580年頃、ポルトガル人によって伝えられ、やはり観賞用とされていたが、明治になり、一部の人が食用にした。庶民の間で本格的に食べられるようになったのは、昭和30年代(1955~)から。

 漢方では、トマトは「清熱解毒」作用、つまり「血液を浄化し、体熱を下げる」作用がある、とされている。含有成分の有機酸(クエン酸、リンゴ酸、コハク酸…)が胃液の分泌を促して、消化を促進、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、K(カリウム)などのアルカリ分が酸を中和するので、魚、肉料理の付け合わせとして最適である。

 同じく、ビタミン「C」や「P」が血管強化作用を有し、高血圧や眼底出血に奏効する。赤い成分の「リコピン」(カロチノイド)は免疫力を強化し、ガン予防効果が期待される。「ペクチン」(食物繊維)は、整腸作用、便秘改善に役立つ。

「グルタミン酸」や「アミノ酪酸」には健脳効果も確かめられている。

 このように種々の効能があるので「トマトを作る家に胃病なし」「トマトが赤くなると(患者が減り)医者が青くなる」という諺があるのだろう。

 トマトは南米(熱帯)産である為、漢方医学の陰陽論では「体を冷やす陰性食品」である。

 よって、体を温める陽性食品である「塩」をふりかけて食べると「いい塩梅」となり、味も旨くなり、更なる健康食物になる。イタリア料理で、トマトに熱(陽性)を加えて料理するのも理にかなっている。

 ◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は生島ヒロシ氏との共著「70代現役!『食べ方』に秘密あり」(青春出版社)。