東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相が東京地検特捜部から事情聴取されていたことが9日に分かり、特捜部の本気度がうかがい知れる一方、AOKIルートでの立件はないとの見方が大勢だ。

 元電通で組織委元理事の高橋治之容疑者の受託収賄事件に絡んで、今月1日に産経新聞が森氏の関与を報じていた。贈賄罪で起訴されたAOKIホールディングス前会長の青木拡憲被告が森氏に見舞金として、現金200万円を手渡していたというのだ。

 ところが、このAOKIルートでの森氏の立件は〝消滅〟したとみられている。

「首相経験者でもある森氏に任意とはいえ、事情聴取まで及んだのは驚きですが、AOKIルートでの立件はなくなったとみていいでしょう。というのも青木前会長らが7日に保釈された。森氏への200万円が賄賂だったとして、立件するならば、口裏合わせや証拠隠滅の疑いがあるためにこの段階での保釈は認めません」(永田町関係者)

 一方、他のルートでの捜査は不透明だ。出版大手「KADOKAWA」の元専務らが6日に贈賄容疑で逮捕されているが、森氏は同社がスポンサーに選定される前に高橋容疑者と面会していたことが分かっている。また、講談社がスポンサー候補を辞退した事情に関し、週刊文春は「講談社だけは絶対、相容れない」と森氏が発言したとされる音声を公開している。

 特捜部はスポンサー企業を根こそぎ調べ上げていて、KADOKAWA以外にも森氏が関与した疑いのある企業が複数、挙がっている。どこまでメスを入れるかが注目される。