東京五輪組織委員会の元理事高橋治之容疑者が受託収賄容疑で逮捕された事件で、贈賄側として前会長青木拡憲容疑者ら3人が逮捕された紳士服大手・AOKIホールディングス(HD)は、同五輪の開催が決まった2013年の国際オリンピック委員会(IOC)総会で、開催地ブエノスアイレスに派遣された東京招致団の公式服装も手がけていた。

 今は亡きジャック・ロゲIOC会長(当時)の「トーキョー」がブエノスアイレスで発せられたのは13年9月。同年4月、AOKIHDは「東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会」にオフィシャルパートナーとして協賛することを発表した。

 これにより、同社は東京招致のオフィシャルスーツの制作を担当。発表によると「国際的に活躍するデザイナー島田順子氏監修の洗練されたスタイリングが楽しめるAOKIのプライベートブランド JUNKO SHIMADA JS hоmmeのスーツになります」とのことだった。

 このスーツに身を包んだ招致団が、プレゼンテーションにも登壇。「お・も・て・な・し」が流行語大賞にもなった滝川クリステルもその1人だった。当時の安倍晋三首相も着用。まさに勝ちを呼んだ勝負服となった。

 AOKIHDは18年10月、東京五輪・パラリンピック組織委のスポンサーに。その選定過程で、AOKIHDと高橋容疑者の間に賄賂が伴う請託・受託があったと、逮捕した東京地検特捜部は汚職の構図を描いているとみられる。組織委は公益財団法人で、高橋容疑者ら当時の役員は「みなし公務員」とされた。

 19年11月には、日本オリンピック委員会(JOC)などが選定する東京オリ・パラ日本選手団の公式服装の担当業者にAOKIが選ばれた。晴れの公式ウエアのお披露目に際し、組織委の森喜朗会長(当時)はブエノスアイレスの勝利を振り返り、「大変縁起のよい制服です」と語っている。

 AOKIは18年の平昌冬季五輪でも日本選手団の公式服装を手がけている。五輪への関わりが深い企業と高橋容疑者の関係を、逮捕に踏み切った特捜部が解明することになる。