前園率いるUー23日本代表「マイアミの奇跡」生んだ!?エビアンの水

2021年11月16日 14時00分

28年ぶりの五輪出場に貢献した前園(東スポWeb)
28年ぶりの五輪出場に貢献した前園(東スポWeb)

【多事蹴論(20)】1996年アトランタ五輪アジア予選の壮絶な舞台裏とは――。68年メキシコ大会で銅メダルを獲得して以来の五輪出場を狙うU―23日本代表は96年3月にアトランタ五輪アジア最終予選(マレーシア・クアラルンプール)に臨んだ。1次リーグを2勝1分けで突破し、準決勝のサウジアラビア戦に勝てば、28年ぶりの五輪切符を手にする決戦前夜、スタッフは街中を駆けずり回っていた。

 西野朗監督率いるU―23代表でコーチを務めていた山本昌邦氏(2004年アテネ五輪代表監督)は「現地のミネラルウオーターに不安があった。そこで試合では外国産のミネラルウオーターを使用することになり、スタッフ全員で街に出て買いあさったんだ」と明かし、コーチ陣や用具係はもちろん、主務などの事務方スタッフら選手以外の全員が水探しに奔走していたという。

 当時アジア各国ではミネラルウオーターといえども安心して飲用できるものではなかった。中には水道水を入れ、再販売されるものも珍しくなく、山本氏も「ミネラルウオーターでも現地のものはフタが緩いものもあった。選手にはそういう水には『手を出すな』と指示もしていた」。五輪出場を決める大一番で不測の事態を避けるため、信頼度の高い輸入品で世界的に知られるフランス産のミネラルウオーター「エビアン」を集めていたのだ。

 地元産ミネラルウオーターのペットボトル1本(500ミリリットル)が20~30円の時代。エビアンの値段は200円以上。このため地元では、ほとんど飲用しないが、一部の商店が外国人観光客向けに販売していた。一括での大量購入が難しいため、日本チームは試合直前まで街の商店を回り在庫を吐き出させてまでエビアンを購入した。全スタッフが協力し、必要最低限とされる本数を確保。試合に向けて準備を整えたという。

 日本サッカー界の命運を担う決戦はエースのMF前園真聖が絶好調。キレのあるドリブルでチャンスを演出し、2得点をマーク。当時「世代最強」と呼ばれていたサウジアラビアに2―1で勝利し、見事に28年ぶりとなるアトランタ五輪出場権を獲得した。そしてアジア予選を経てレベルアップした日本は本大会で世界最強のブラジルに1―0で勝利し「マイアミの奇跡」として語り継がれる歴史をつくった。

 山本氏は「世界に勝つにはささいなことにも気を配らないといけない。ほんの少しの差が勝敗にも影響する。そういう積み重ねが日本を強くする」と力を込めていた。ちなみに偉業を成し遂げた西野監督、山本コーチら当時のスタッフは年に1度くらいのペースで親睦会を開催しており、その会の名称が「エビアン会」。シーズンオフになると開催され、水ではなく、お酒を飲みながら、当時の苦労話に花を咲かせているそうだ。

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