梅雨真っただ中。身も心も気もめいる季節だが、逆に改めておうち時間が増え、雨音を聞きながら読書にふけることにも適した時期でもあります。ひと足早く夏をテーマにした本を読んで、気持ちだけでも梅雨明け前に真夏の太陽の光を浴びてはいかがでしょうか。そこで今回は「夏を感じさせる本」5冊を、都内でも有数の大手書店・芳林堂書店高田馬場店の書籍担当・山本善之さんに推薦していただきました。 (協力・芳林堂書店高田馬場店)

「夏休みの空欄探し」(似鳥鶏・著=ポプラ社)

【ちょっぴり甘くて切ない物語】「夏休み」というのは、奇跡を起こす特別な期間なのかもしれません。どこまでも続く青い空、白い雲。その中心で輝く太陽はとてもまぶしくて。

 クラスの人気者「成田君」ことキヨと、どちらかというと物静かな「じゃない方」のライ君。一見すると相反する2人が、美しすぎる姉妹、雨音さんと七輝さんに出会い、次々と提示される謎を解き明かしていくその先に待っていたものとは?

 その時にしかできない、その何かを見つけることができた時、全ての謎の答えが明らかに!? ちょっぴり甘くて切ない彼らの物語に、皆さんもきっと夢中になるはずです。

「思い出のとしまえん」(小宮佐知子、内田弘、小林克・著=文学通信)
 「思い出のとしまえん」
「思い出のとしまえん」

【としまえんロス解消できます】「プール冷えてます」。関東圏ではとしまえんを夏の象徴として認識していた方も多いのではないでしょうか。他に類を見ない斬新な広告。広大なプールで力尽きるまで遊んだあと、夜まで目一杯乗り物とゲームコーナーを満喫してぬいぐるみを抱えて帰る…2020年に閉園するまで、数多くの人々を笑顔にしてくれました。

 そして約2年後、満を持しての卒業アルバムとして発売された本書は、貴重な資料をふんだんに用いてあらゆる世代がとしまえんで遊んでいた自分を見いだせる本になっています。これでようやく「としまえんロス」を解消できます。

「下山事件 最後の証言 完全版」(柴田哲孝・著=祥伝社文庫)
 「下山事件 最後の証言 完全版」
「下山事件 最後の証言 完全版」

【戦後の夏に起きた怪事件ルポ】戦後の夏は、すごく暑かったと聞きます。

 ギラつく太陽、扇風機、白いランニングシャツ、半袖ワイシャツ。そんなイメージの世間も混沌としていた時代に起きた怪事件のルポが本書。昭和24年(1949年)夏に起きた下山事件は迷宮入りとして語り継がれています。

 今まで幾多の関連本が出版されてきて、私も数多く読んできましたが、本作は著者の祖父が事件の実行犯かもしれないと衝撃の話から始まります。この時点で興奮状態。今まで解明されなかったことが分かるかもしれない。

 1ページ、1ページ読むごとに事件の新たな側面が1枚1枚と剥がれていくようで、本をめくる手が止まらなくなります。真相はいかに? 戦後史の読み物としても圧巻です。

「かき氷本」(昭文社旅行ガイドブック編集部・著=昭文社)

【眺めるだけでも涼を得られます】今年の夏も暑いのだろう。温暖化には拍車がかかっているし…と、お嘆きの皆さんに一時の「涼」をプレゼントする夏のスイーツといえば「かき氷」。「最近はやってるよね。でも氷に500円以上かけるのって…」とお考えの方にさらにおすすめしたいかき氷のラインアップが1冊にまとめられている本が「かき氷本」です。

 編集者の意気込みもすごい! 各店ごとに氷や、かき氷機、シロップをデータ化、写真もきれい。眺めてるだけでも「涼」を得られます。私のオススメは日光の天然氷を使ったかき氷。実はスカイツリーのアンテナショップでも食べられます。お近くにお越しの際はぜひ!

「ひまわりは恋の形」(宇山佳佑・著=小学館)
 「ひまわりは恋の形」
「ひまわりは恋の形」

【夏の1週間しか会えない究極の遠恋】1年のほとんどを眠り続けるという不思議な体質の持ち主、雫。主人公の日向は夏の1週間しか会えないという究極の遠距離恋愛が始まります。その運命のなかでも、ひたすら一生懸命に生きる登場人物にとても心打たれます。

 究極の真実の愛と言ってもよいのかもしれません。雫と日向のこの愛のカタチは、私たちに愛と勇気と希望をもたらしてくれます。