【田辺晋太郎の肉アカデミー】 Nice to MEAT you! 今回は牛のホルモンに関する、ある研究成果をお話しいたしましょう。

 ホルモン焼きがすっかり市民権を得ている昨今。「ヤン」「マメ」「ネクタイ」など、以前は名前も知られていなかった部位が食べられるようになってきました。そんな中でもまだ手付かずの部位があります。どこかわかりますか? アソコですよ。あ・そ・こ。

 それはズバリ、牛の“チンチン”です。豚のタマ(睾丸)は「ホーデン」と呼ばれ、出しているお店もありますが、牛のタマを見かけることはほぼありません。なぜなら種牛候補を除くほとんどの雄牛は、肉質を良くするために生後半年ぐらいでタマを取られてしまうからです。取られたタマは捨てられてしまいます。

 先日、芝浦の食肉市場内で卸業務を営む会社の方にご招待いただき、「ホルモンを食べつくす会」に参加させていただきました。

 私は「焼肉の教科書」という本を出しているぐらいですから、肉の部位については詳しい方です。しかしそれでも見たことがないモノが出てきます。驚いたひとつが「牛黄(ごおう)」。牛の胆石で、薬の原料にもなっています。和牛のものはめったに手に入りません。

 そしてこの日の目玉が「タマとサオ」です。タマは皮を剥いで、中身を刺し身でいきます。にんにくじょうゆかショウガじょうゆにつけていただくその味は、全く臭みがなく、うまい! フグの白子のような濃厚さで、食感は牛のシビレに近いですね。バター焼きにしてもおいしそうです。

 参加者の皆さんの間で、「剥いだタマ皮も食べてみよう」という声が上がり、焼いて、しょうゆで食べたところ、これが意外にイイ! コリ&グニュッとした食感が面白く、味も良い。酒のアテにピッタリです。焼く時に一瞬アンモニア臭があるだけで、臭みはなく、これは焼き肉のメニューにあってもよさそうです。玉川高島屋でこの「タマガワ」を売ってくれないかな(笑い)。

 なお、サオを焼いて食べたところ、ニオイがあり、かみちぎれず、これはちょっと食用に向かなそうです。

 牛のタマとサオを食べての結論は、「タマあり、サオなし」。タマは皮も中身も焼き肉屋で出せる! 捨てている子牛のタマも、活用する道があるかもしれません。

 ☆たなべ・しんたろう 1978年生まれ。東京都出身。2001年に「Changin’ My Life」でデビュー。03年に解散後は作曲家としてAKB48在籍時の渡辺麻友などに楽曲を提供。監修した「焼肉の教科書」シリーズは累計35万部を突破。最新著作「焼肉のすべて」が発売中。両親は歌手の田辺靖雄と九重佑三子。