名門暴力団組織の山健組(中田浩司組長=殺人未遂罪などで起訴、勾留中)が特定抗争指定暴力団「山口組(=以下、六代目山口組)」に復帰することが分かった。2015年の分裂騒動から6年が経ち、大きな戦力を加えた六代目山口組は、特定指定暴力団「神戸山口組」に対して完全に優位に立ったと言えるだろう。勝負は付いたのか、それとも――。

 山健組は神戸山口組・井上邦雄組長の出身母体で、中核を担っていっていたが、昨年7月に離脱。独立組織として活動してきたが、先月末に六代目山口組、山健組の両幹部が話し合いを持ち、復帰が決まったという。

「今月に入って、復帰話が浮上したが、ここ数日は『話は流れた』という情報も駆け巡っていた。山口組分裂騒動の大きな節目となる出来事だけに動向が注目されていたが、予定通り16日に復帰が正式に決まった。午後に通達が出たようだ」(暴力団に詳しい関係者)

 2015年、六代目山口組から脱退して神戸山口組を結成した13人の直系組長には、絶縁や破門の処分が下された。当時、山健組組長でもあった井上組長は最も重い絶縁処分となったが、現在の五代目山健組の中田組長は処分されていない。

「分裂以降、六代目山口組の執行部は『若い衆に罪はない』という姿勢を続けている。中田組長は分裂騒動当時、山健組の中枢にいたが理屈としては井上組長の〝若い衆〟にあたり、処分もされていないため、戻りやすかったのではないか。今回、山健組が復帰するにあたって、中田組長も六代目山口組の幹部(=役職名)に就くとの情報もある」(前同)

 山健組までも六代目山口組に復帰したことは、分裂騒動を語るうえで将来、大きなトピックとなるだろう。戦力面ではもちろんのこと、心理面でも与える影響は大きい。

「六代目山口組がますます盤石となったことは間違いない。勢力、戦力で見たら、圧倒的に有利な状況となった。六代目山口組は、特に2019年に高山清司若頭が出所してから、早期決着を目指して攻勢を強めているだけに、抗争に終止符が打たれる日も、そう遠くないかもしれない」(暴力団事情に詳しいジャーナリスト)

 優勢の六代目山口組と劣勢の神戸山口組――現段階でこの構図を崩すのは難しそうだが、状況を変える要因になりかねない一つが新型コロナウイルスと言われている。

「コロナはヤクザだろうがカタギだろうが、関係なく襲い掛かってくる。万が一、主要人物がコロナに感染して次々と戦線離脱するようなことがあれば一気に戦況が変化する可能性はある。それを分かっているため、親分たちはコロナに感染しないよう非常に気を遣っているが…」(前同)

 六代目山口組の機関紙「山口組新報」9月1日号でも、コロナに感染した二次団体組長が体験記を寄せ「誰が感染したとかワクチンの接種、未接種などの形に囚われず、常に見える事の無いコロナウイルスが付近に蔓延していて、いつ何時でも感染する可能性があると心掛けて頂ければと私は思います」と呼びかけている。

 また1面の「巻頭言」でも執行部の幹部が「今こそ山口組が一致団結し、早期の終結と親分(注・司忍六代目山口組組長)の平穏である毎日を取り戻すために努力せねばなりません」としたうえで、昨今のコロナ禍にも言及。手洗い、うがい、マスク着用、消毒スプレーでの除菌を「常識」とし、「この緊急事態をのりこえるのは対岸の火事と思わぬ皆様の意識こそが最大の防御だと私自身考えている次第です」とつづった。

 早期の抗争終結に向けて、六代目山口組は着々と準備を進めている。