菅政権のメッセージ力のトホホぶりがここにきて際立っている。お盆休みを前に閣僚たちは帰省を自粛するよう呼びかけているが、効果のほどは未知数。五輪開催を強行する一方で、国民にお願いするだけでは理解が得られなくても仕方がない。ネット上では“菅話法”の大喜利で反発される始末だが、同政権を巡っては、以前から「何かを言ってそうで何も言っていない」という“進次郎話法”もネタになっていただけに、もはやメッセージ力の欠如は決定的。今秋の衆院選への影響も必至の様相だ。

 新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大は収まる様子がない。

 お盆休みを迎えるだけに、菅政権は焦りを募らせている。西村康稔経済再生相が「帰省をして家族で集まるのは絶対に避けていただきたい」と求めれば、田村憲久厚労相も「感染が拡大している。帰省はできるだけ控えていただきたい」と呼びかけた。

 だが、国民はどこ吹く風。無理もないだろう。リスク評価を十分にしないまま、開催ありきで五輪を強行したことに、いまだ不満がくすぶっているからだ。

「代表選手の頑張りは尊重されるにしても、そもそも開催に関する菅政権の説明がてんでダメ。そのためネット上では五輪開催を無理強いした“菅話法”で反発していますよ」(テレビ局関係者)

 SNSでは菅話法を応用し、「中止の考えはない。強い警戒感を持って帰省に臨む」「バブル方式で帰省する。感染拡大の恐れはないと認識している」「安心安全な帰省に向けて全力で取り組む」「コロナに打ち勝った証しとして帰省する」などと大喜利状態。

 菅政権が五輪開催に強弁していた言い回しをそっくりそのまま「帰省」に当てはめているというわけだ。

 前出関係者は「裏を返せば、それだけ同じような文言に終始し、説明してこなかったということ。菅首相のメッセージ力のなさが浮き彫りになった格好です」と言う。

 そもそも菅政権のメッセージ力は当初から不安視されていた。とりわけ、小泉進次郎環境相はいち早く“話法”が確立されていたからだ。

 発端となったのは2019年の国連気候行動サミットでの発言。小泉氏はポエムのように「気候変動のような問題はセクシーに取り組むべき」と言い放ち、“ポエマー”と呼ばれ、それまで自民党の中で圧倒的な支持を集めていた人気に疑問符がついた。さらに別の場面で「今のままではいけないと思います。だからこそ日本は今のままではいけないと思っている」というコメントが決定打となり、“進次郎話法”が完成したのだった。

 永田町関係者は「ほかにも、温室効果ガスの削減目標を2030年に13年度比で46%としたことに『おぼろげながら浮かんできたんです、46という数字が』という言い方も物議を醸しました。それら一連の発言を引き合いに『進次郎が言いそうなこと』が大喜利としてネット上で大盛況。まあ、要するに中身スカスカということですね」と指摘する。

 菅政権の閣僚としては、先日も丸川珠代五輪相がやらかしている。東京五輪が閉幕した翌9日に国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が、銀座を散策したことにコメントを求められ「不要不急の外出かはご本人が判断すること」と回答。すると「だったらオレらも外出OKじゃん」と猛バッシングを浴びた。

「平時ならともかく、今はパンデミックという有事です。国民の生命がかかっている場面でメッセージ力の欠如は、政治のリーダーとして失格と言わざるを得ません。報道各社の最近の世論調査でも菅政権の支持率は下がっているのが何よりの証し。今秋の衆院選への影響は必至でしょう」(永田町関係者)

“話法”として法則化されるようになっては、国民には届かないことを肝に銘じるしかない。