オリックスのT―岡田外野手(34)の、人生最初の〝師匠〟棚原安子氏(82)が、教え子の背中を押した。大阪・吹田で少年軟式野球チーム「山田西リトルウルフ」を1972年に設立し、50年間にわたって指導を続ける「おばちゃん」こと棚原氏が、16日の日本ハム戦(京セラ)の始球式に登場。打席に立ったT―岡田に向かって力強いボールを投げ込んだ。

 これまで1200人以上を指導し、現在もノックを打つ〝鉄人女史〟。地元の公園で虫取りをしていた小学3年のT―岡田に「野球やってみいひんか」と声をかけ、3年間にわたって指導し、才能を開花させた。「気持ちの優しい子だけど、野球のセンスがあり、打席に入ると様相が変わる。インコースをファウルにならずに打てていた。グラブさばきもうまかった」。1200人の教え子のうち、プロになったのはただ1人だけに「宝のような存在」と愛情もひとしおだ。

 オリックス入り後も愛弟子を気にかけてきた棚原氏だが、かつての本塁打王も近年はケガに苦しみ、今季も打率1割台に低迷。スタメンを外れることも多い。それでも「体が動く限りはチームに貢献してほしい。ベンチにいててもベテランなりの役目はある。チームの中でも重要な存在。いるだけで安心できるような存在になってくれていると思う。それを発揮して貢献すること。スタメンで出るだけが野球じゃない。役割を忘れず、そこに徹してもいいんです」とエールを送った。

 久々の再会にT―岡田も「おばちゃんに誘われたことがきっかけで野球を始め、僕にとって大切な恩師の一人。今後もおばちゃんにしっかり成長した姿を見せられるよう頑張っていきたい」と気持ちを新たにした。V争いを繰り広げる中、自分にしかできない役割を果たしていく。