【前田幸長 直球勝負】広島・鈴木誠也外野手(25)は今年もやってくれそうだ。15日の練習中に打球が右ふくらはぎに直撃するアクシデントに見舞われながら、翌16日の中日との練習試合(北谷)に志願出場して左翼フェンス直撃の二塁打。そうした意識の高さはどこからくるのか。鈴木誠は本紙評論家の前田幸長氏にこう明かしていた。

 練習を見ているだけで闘気が伝わってきた。スイングスピード、打球の速さ。打撃メニューにおける一挙一動はまるでお手本のように素晴らしく、そして力強い。しかも常に気持ちがこもっているから、周りの選手たちも触発される。その真摯な姿勢がチーム全体にいいムードをつくり出しているのは間違いない。

 しかも今年は東京五輪イヤー。チームだけでなく日本代表としても期待がかかる。昨年11月のプレミア12では4番に座り、世界一に大きく貢献。文句なしで侍ジャパンの4番候補と目されているだけに今から重圧も大きいはずだ。本人を直撃してみると「(プレミア12ではソフトバンクの)柳田さんとか(西武の)山川さんとか来てない人がいっぱいいたんで、4番はそういう人たちに任せて僕は裏方に回るとか」と自虐的に笑った。

 すかさず「誠也、それは似合わないでしょ」とツッコミを入れると「どこでも試合に出られたらありがたいんで。一生懸命そこで4番らしい活躍をしたいですね。4番じゃなくても」との答えが返ってきた。

 さらには「試合に出てかかわっていれば7番、8番であろうが、得点、打点のチャンスで回ってくることもありますし。そこで打てば4番みたいなものなので関係ないですね」とも…。

 それは意外な言葉だったが、理想とする4番像の域に自分はまだ達していないと思っているらしい。

「僕自身がテレビで自分のことを見たときとか、やっぱり4番ではないなと。そういう雰囲気が感じられない。雰囲気というか風格かな。やっぱ僕だったら筒香さん、中田翔さんとか…。山川さんとか、前の人で言うと、清原さんとか。生まれ持ったオーラとか、そういう人が4番に座るべきだと思うので。自分では全然4番じゃないですね。怖さがないです」

 ここまで自分に厳しいとは恐れ入る。断っておくが、彼は4番を打ちたくないわけではない。むしろ「4番に対して特別感はありますね」と言い切るように、本心ではチーム、そして侍ジャパンでも誰もが認める“真の主砲”として君臨したいのだ。

「そこ(真の4番打者)には全然近づけていないし、全然ダメです。やっぱりそうなるためにも結果もそうだし、実力とか技術も上げていかないと。もっとやんないと」

 鈴木誠也はとんでもない打者になる。じっくり話を聞いて、そう確信した。