【マンデー激論】アフガニスタン情勢が急速に悪化している。米国のバイデン政権が8月末日までにアフガニスタンから米軍を完全撤退する方針を明確にし、撤退を開始したからだ。

 その結果、イスラム教スンナ派系過激派のタリバン(タリバーン)が攻勢に転じた。タリバンは、アルカイダや「イスラム国」(IS)ともネットワークを持つ危険なテロ組織だ。

<アフガニスタンの南部スピンボルダックにあるパキスタンとの国境検問所近くで、同検問所を支配下に収めた反政府勢力タリバーンが関税を徴収し始めたと、パキスタンメディアが(7月)28日に報じた。アフガン政府の税収を奪ったタリバーンが、戦場でさらに勢いづく可能性がある。/同検問所は、内陸国のアフガニスタンと海のあるパキスタンの交易の要衝。交易にかかる税金は、財政難のアフガン政府にとって貴重な収入になってきた。/パキスタンの英字紙ドーンが、地元当局者らの話として伝えたところでは、タリバーンは約20ページ分の規則を公表し、27日から交易品に税をかけ始めたという。/アフガニスタンでは、米軍撤退が本格化した5月以降、タリバーンが隣国パキスタンやタジキスタン、イランとの国境検問所や物流拠点を次々に占拠している。/米軍によると、タリバーンは7月21日までに、アフガニスタンの約半数の地区を支配下に置いた。タリバーンはアフガン政府の支配地域に激しい攻撃を仕掛けている>(7月30日「朝日新聞デジタル」)

 アフガニスタン経済において関税が占めるウエイトは高い。同国の経済的実権はガニ大統領からタリバンに移行してしまったと見た方がいい。タリバンが実効支配する領域は、今後、一層拡大するであろう。

 もはやアフガニスタンからタリバンを放逐することは不可能だ。タリバンが政権を握ることになれば、欧米基準での人権や民主主義を無視したシャリーア(イスラム法)による残忍な統治を行うことは確実だ。

 重要なのは、アフガニスタンが再び国際テロリズムの拠点にならないようにすることだ。このあたりの事情をロシアはよく理解している。ロシアはアフガニスタン北部のタジク人勢力、ウズベク人勢力を支援するとともに、タリバンとも利害調整を行うであろう。

 タリバンもロシア、中国との関係を改善することで、再び米国がアフガニスタンに軍事進攻するリスクを軽減しようとすると思う。

 ☆さとう・まさる 1960年東京生まれ。85年、同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省に入省。ソ連崩壊を挟む88年から95年まで在モスクワ日本大使館勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍した。2002年5月、背任容疑などで逮捕され、09年6月に執行猶予付き有罪判決が確定した。20年に「第68回 菊池寛賞」を受賞した。最新著書は「悪の処世術」(宝島社新書)がある。