漫画家の森川ジョージ氏(60)が28日「X」(旧ツイッター)を更新。今月22日に死去したちばてつやさん(享年87)への想いを長文でつづった。

 ボクシング漫画「はじめの一歩」の作者の森川氏は「22歳の頃、すでに連載は三度打ち切りとなっていた。担当編集者は『ラストチャンスだぞ』と励ましてくれて、そのつもりでネームを書き連載会議に提出し続けて一年ほどが経った」と38年ほど前の思い出を回顧。

 さらに「その日会議の結果を待ち廊下に面した曇りガラスの向こうで過ごしていると会議終わりの編集者がぞろぞろと歩いてくる。『森川ジョージという名前を見るだけで読む気なくなるよ』とハッキリと聞こえてきた。残念そうにネームを返却する担当と会話を交わすことなくそのまま講談社別館に行き60ページを頭から書き直した」とその時に耳にしたショッキングな言葉を明かし「先ほどの声が耳から離れない。三度失敗したらそういう評価は当然だろうと思う。ラストチャンスと奮い立たせてきたもののそれはもう使い果たしていたことを痛感した」と打ちひしがれた当時の自分をつづった。

 続けて「悔しさよりも悲しさが上回った。憧れのあの人のいる雑誌から離れるという選択肢を迫られていることが悲しかった。あの人の隣に並びたいのに自分にはあまりにも力が足りなかった。もう記憶が曖昧だがおそらくこの時僕は泣いていた」と投稿。〝あの人〟とは巨匠・ちばてつやさん。

 当時の状況について森川氏は「描いても描いても受け入れてもらえずついには会議でネームすら無視される。連載を続けたかった。漫画が上手くなりたかった。でもあまりにも力が足りない。どうしていいかわからない。ずっと頭の中であの人に問いかけていた。『漫画上手いって一体どんな気持ちですか?』『漫画上手いって…』答えてくれる人はいないけれどずっと問いかけた。もはや考えているのはネームではなくそれだけ。考えられないからそれをそのまま書いた」と心の中で何度もちばさんに問いかけていたという。

 そして「『強いって一体どんな気持ちですか?』もう何も出てこない。これでダメなら漫画家をやめよう。そう決心してネームを再提出した。そして連載が決定した。『はじめの一歩』はあの人へ問いかけで始まって、今も問いかけながら続けている」と人気漫画「はじめの一歩」の連載開始までの経緯を明かした。

 その後ちばさんと会う機会はあったというが「いつか実際に聞いてみたかったが少し仲良くなってしまって照れくさくて口に出せなかった。機会はたくさんあったのに。はじめの一歩は僕の漫画家としての第一歩であり、あの人との悠久の会話の始まりだった。もう答えてくれる人はいないけれど、これからもずっと問いかけていく」とかつてちばさんに心の中で問いかけた言葉は口にすることになかったという。

 その上で「『ちばさん、漫画上手いって一体どんな気持ちですか?』ありがとうございました」と改めて問いかけ、ちばさんへの感謝の気持ちをつづった。