悔しさをバネにさらなる進化へ――。レスリング女子で五輪3連覇、世界選手権13連覇の吉田沙保里(44)が28日、徳間ジャパンコミュニケーションズからソロアーティストとしてデビューする。16日には東京・亀戸香取神社でヒット祈願。その後の取材では自身の現役時代を振り返り、愛知・名古屋アジア大会で公式戦連勝記録が155でストップした藤波朱理(22=レスター)に熱いアドバイスを送った。
藤波は2024年パリ五輪53キロ級で金メダルを獲得。57キロ級に転向後初のシニア国際大会となるアジア大会では、準決勝で北朝鮮選手にまさかの敗戦を喫した。3位決定戦でベトナム選手を下して銅メダルを獲得したが、大粒の涙を流した。
長きにわたり世界のトップに君臨した吉田も、藤波と同じ過去を持つ。08年W杯団体で米国選手に敗れ、公式戦の連勝記録が119で止まった。当初は失意に暮れるも、母・幸代さんの次の言葉が立ち直るきっかけとなった。「119連勝しているということは、119の人が悔し涙を流しているんだよ。あなた、ただ1回負けただけでしょ」
視野が狭くなっていた吉田の視界が一気に開けた。「『あ、そっか』という気持ちになった。勝った時よりも、負けた時の方が(それまで自分を)知らなかった方からも手紙やメールをいただいて『こんなに応援していただいていたんだ』と気付かされた。ここでくよくよしている場合ではない」。自身の背中を見て競技に励む子供たちの姿も頭に浮かんだという。
「私が手本とならないといけないのに、いつまでくよくよしているのかなというのもあった。また気持ちを切り替え、次に向けて頑張ればいい。そして、また金メダルを取って、みなさんに恩返しをできたらという思いにもなれた」。再び闘争心に火がついた吉田は、同年北京五輪55キロ級で2連覇を達成。12年ロンドン五輪でも同階級で頂点に輝いた。
藤波の最大の目標は、28年ロサンゼルス五輪での金メダル。アジア大会の敗戦も、通過点の一つだ。吉田は「ただ1回負けただけで、記録は止まったかもしかもしれない。でも、記録にとらわれず、自分が何をやりたいか、どうしたいかを考えていけばいいと思う。最終的には五輪で勝つことが彼女の目標であり、夢だと思うので」とアドバイスする。
その上で「負けることだって、人にはよくある。そこはあまりくよくよせず、本人しかわからないことだが、たぶんもう切り替えられていると思う。1回の失敗で人生が終わったわけではない。失敗を繰り返して、またさらに強くなっていってほしい」とエールを送った。下を向かずに一歩ずつ前へ。吉田は温かいまなざしで、後輩のさらなる飛躍を願っている。














