【ドアーズ/ハートに火をつけて(1967)】

 ロック史上最も重要なバンドのひとつに挙げられるドアーズのデビュー盤にして最高傑作。サイケデリックムーブメントと反戦運動が高まる中、突然に登場したジム・モリソンは前例のない反体制的なカリスマ性を持ち、計算された言動や奇行などで話題を呼び、一気に時代の寵児となった。

 そして音楽。起伏に富んだ硬質な音と文学的な歌詞を持った性急かつハードな音は世界中に衝撃を与えた。ジムの表現力豊かな低音域を中心とした、圧巻の存在感を持つボーカルと文学的歌詞。ベースを置かずにレイ・マンザレクのキーボードを前面に押し出したスタイルも新鮮だった(録音時にオーバーダビングの曲もあった)。ドラッグの影響下は明らかだったが、本作はファンや評論家から絶賛の嵐を浴びて、バンドは一気に時代の寵児となった。

 A面1曲目の「ブレイク・オン・スルー」から従来にはなかったサウンドとボーカルが一気に疾走。当時問題となった「She gets high」のフレーズを叫ぶジムの狂気にも似た声の迫力は筆舌に尽くし難い。続けて「ソウル・キッチン」「水晶の舟」「アラバマ・ソング」とブルースを基調としながらジャンルにとらわれない多彩な音を聞かせる。

 そしてバンド最大のヒットとなった名曲「ハートに火をつけて」(全米1位)でA面は息もつかせぬ間に終わる。

 B面はブルースナンバー「バック・ドア・マン」で始まり、バンドの代名詞と同時に問題作とされ、今でも歌詞の世界が議論の的となる11分35秒の「ジ・エンド」で幕を閉じる。後に映画「地獄の黙示録」で使われたシーンは衝撃的だった。トータルわずか43分34秒。67年当時の世界とロックシーンをひっくり返した永遠の名盤である。