【アバンダンド・ランチョネット/ダリル・ホール&ジョン・オーツ(1973)】

 1980年代にメガヒットを連発したスーパーデュオのセカンドアルバム。まだビッグネームになるはるか以前の作品だが、見事なブルー・アイド・ソウルを展開しており、キャリア初期を代表する名盤である。

 とにかく一貫して黒人音楽への憧れと敬意が貫かれている。当時の2人はソウルミュージックのことしか頭になかったのではないかと思わせるほど、楽曲にかける若き日の情熱と勢いが伝わってくる。

 A面1曲目の「つめたい朝」からアルバム中屈指の名曲「悲しいめぐり逢い」への流れは身震いするほどで、フォーキーかつ2人のボーカルの絡みが抜群のセンスを発揮している。4曲目の名曲「追憶のメロディー」は76年に再リリースされて全米7位のヒット曲となった。

 B面に移っても静かなイントロから複雑なコードに移行する「アバンダンド・ランチョネット」、独特のファンクネスを持った「レディ・レイン」と続き、ファンキーな「きみを見つめていると」で幕を閉じる。とにかく捨て曲がなくソウルへの愛情に満ちた傑作に仕上がっている。

 その後70年代後半から「リッチ・ガール」「ウェイト・フォー・ミー」「キッス・オン・マイ・リスト」「プライベート・アイズ」「マンイーター」「アウト・オブ・タッチ」などのメガヒットを連発するが、いわゆる「産業ロック」のにおいは感じさせなかった。根本でソウルへの深い敬意を失わなかったからだろう。その後、コンビは分裂するが、2004年にはソウルの名曲カバー集「アワ・カインド・オブ・ソウル」をリリースしている。こちらも傑作だ。