格闘技イベント「ONE SAMURAI 1」(29日、有明アリーナ)で、元K―1世界3階級制覇王者の武尊(34)がロッタン・ジットムアンノン(28=タイ)を相手に引退試合を行い、最後の最後に大仕事をやってのけた。

 ロッタンとは昨年3月に対戦も1ラウンドKO負け。今回はONEフライ級キックボクシング暫定王座もかけられたラストマッチで、その因縁の相手と対戦した。1ラウンド(R)、武尊はガードを固めながらジリジリと前に出て、蹴りを放つ。終盤には鋭いパンチも打ち込み、ラウンド終了の際にはロッタンと笑みを浮かべながら視線をかわした。

 2Rは武尊が攻勢だ。ラウンド中盤、左右のパンチをヒットさせて最初のダウンを奪う。ダウンではなくスリップだとアピールしながら立ち上がったロッタンに、笑顔を浮かべながら歩み寄った武尊は、左フックで2度目のダウンを奪う。終盤にはコーナーに追い込んでラッシュを仕掛けたが、ゴングでラウンドが終了した。

 3Rはロッタンの猛反撃を受ける。2Rの失点を取り戻すべく、前蹴りを打ちながら放つパンチを受けた。だが、武尊は受けながら笑顔を浮かべて両手を広げ「来い!」とばかりにアピール。打たれながら鋭いパンチを顔面に叩き込んだ。

 4Rも壮絶な打ち合いで、会場は大「タケル」コールが発生。その声援に背中を押されるように、武尊は前蹴りやカーフキックを打ちつつパンチを突き刺す。終盤に猛攻を受けるピンチもあったが、終了間際に左フックをヒットさせて意地を見せた。

 そして正真正銘の「最終ラウンド」となった5Rでドラマを起こした。再び「タケル」コールが発生する中、ロッタンに打たれながらなんとガードを解除。ノーガードで雄たけびをあげてロッタンに襲い掛かり、パンチの連打でこの日3度目のダウンを奪う。さらに立ち上がった相手に襲い掛かると、ロープに追い込んで現役最後のラッシュをしかけ、ロッタンをヒザから崩れ落とさせた。

 危険な崩れ落ち方にレフェリーが試合を止め、タケルがTKO勝利。そのままコーナーに上がった武尊は、観客席を何度か見回してから最後のムーンサルトで飛んで拍手を浴びた。

最終RでのTKO勝利に、喜び泣き崩れる武尊
最終RでのTKO勝利に、喜び泣き崩れる武尊

 マイクを持った武尊は「ONEに行って何回も負けちゃって、みんなの期待を裏切ったけど、今日、有明アリーナ満員のお客さん集まってくれてありがとうございます。本当にいっぱい言いたいことあったんですけど本当うれしいしかないです。本当にもう…」と男泣きだ。

 さらに「ロッタン選手も、再戦を受けてくれてありがとうございます。ロッタン選手が居なかったら、こんな最高の引退試合はできなかったんで、ロッタン選手にも拍手をお願いします」と対戦相手に感謝の弁。

 そして「ホッとしました。このベルトを取ることだけを考えてこの数年間やってきたので。ケガがあったりいろんなことがあって、遠回りしたけど、最後の最後にこれを取れたことに感謝していますし。この暫定王座戦、本当なら正規王座に挑戦するためのベルトですけど、引退する僕に組んでくれたONEの関係者、チャトリに本当に感謝しています」と続けた。

 その上で「日本の格闘技界、世界の格闘技界、これからもっと盛り上げていくんで…盛り上がっていくんで。僕が引退しても、今日の熱はこれからのファイターたちにも力になるので。ONEだけじゃなくて、K-1、RISE、KNOCK OUT…日本にいっぱい団体がありますけど〝どこの団体がすごい〟とかじゃないんですよ。格闘技がすごいんですよ」と訴える。

 改めて「みんなで立ち技格闘技を盛り上げましょう。こんなんで終わらせちゃダメですよ。みんなでやりましょう。僕も引退後で、できることはなんでも手伝うので。格闘技の熱、みんなで取り戻しましょう。東京ドームやりましょう!」と再興を呼びかけた。

 その後、会場の都合でマイクが使用できなくなると地声で思いを伝える。武尊は「僕は格闘技の才能が全然なくて、運動神経はよくないし。そんな僕でも世界一になれました。だから夢を持っている人はあきらめないでください。もっと強い人、すごい人がたくさんいるっけど、こんな僕に格闘技界をひっぱらせてくれてありがとうございます」と叫ぶ。

 続けて「僕以外にも最高のファイターは、まだまだ日本にも世界にもたくさんいます。もっと格闘技界、注目してもらって好きな選手を見つけて、これからみんなで格闘技界を盛り上げましょう。ここでストップしちゃダメなんですよ。次のひっぱってくれる選手が出てくれるまで、今日来ているお客さん、ファンの人たちみんなで盛り上げてください。よろしくお願いします」として観客席を見回す。

 最後は「このベルトはみんなのおかげで取れたベルトなので、みんなにプレゼントさせください」として腰に巻いたベルトを外してリング中央に置く。グローブも外すと「次の選手、絶対出てくるから。それまでみんな、よろしく。ありがとうございました」として座礼し、リングをおりて現役生活に幕を閉じるのだった。