球春到来。米国ではMLBが開幕して大谷翔平投手、山本由伸投手を擁するドジャースがワールドシリーズ3連覇へ好調なスタートを切った。日本でもプロ野球が開幕。セ・パ両リーグで早くも熱い戦いが繰り広げられている。世界中の野球ファンが胸躍る季節、「映画タイムマシン」では、野球を国技とする米国が生んだ「野球映画ベスト5」をお届けします。

とんねるず石橋貴明も大活躍!

【「がんばれ!ベアーズ」(1976年)】

「がんばれ!ベアーズ」
「がんばれ!ベアーズ」

 エンゼルス時代の大谷翔平がダッグアウトにいる時、ネビン監督が日本製ガムを口に入れた。その途端に大谷は設備をバンバン叩いて大爆笑。監督がかんだのはガムではなく捨て紙だった。

 ちょうど50年前の「がんばれ!ベアーズ」のランニングシーン。脱落した2人がフェンスを越えて裏に隠れる。ガムをかみはじめた太っちょに「包み紙まで食うのかよ」と相棒があきれる。このやりとりがよみがえった。同作は米国野球映画の先駆者的存在である。

 かつてのマイナーリーガーで、今はプール清掃員のバターメイカーは、市議から少年野球の指導を命じられる。しかしメンバーは想像以上のポンコツ揃い。野球の腕はからっきしで、口だけが達者なすがすがしいほどのクズたちだが大敗を経て心の奥底のプライドと仲間意識が目覚めていく過程を描いている。

 悪童たちだけでなく酔いどれ中年の再生物語でもある本作の主演は、ウォルター・マッソー。その元恋人の娘でスピットボール(不正投球)まで駆使するエースにはテイタム・オニール。テイタムはクレジットがリョウコ・ヒロスエでも違和感がないくらいに似ている。

 原題は相手への悪い知らせをもたらす意味の「バッド・ニュース・ベアーズ」。米国公開の3か月後、モントリオール五輪柔道93キロ超級銅メダルに輝いたのがアレン・コージで、後にプロレスラーとなり先日レガシー部門でWWE殿堂入りしたばかりのバッドニュース・アレン。奇遇だ。とにかく笑いあり涙ありの傑作である。

【「フィールド・オブ・ドリームス」(1989年)】

「フィールド・オブ・ドリームス」
「フィールド・オブ・ドリームス」

 92年の大ヒット作「ボディガード」で知られるケビン・コスナー主演で、今なお野球映画の名作として語り継がれている。

 妻子とともにアイオワ州でトウモロコシ畑を営む主人公レイは不思議な声に導かれ、畑の一部に野球場をつくる。やがてその球場に亡き伝説のメジャーリーガー、シューレス・ジョーが現れるが、それは奇跡と冒険の始まりに過ぎなかった…。

 レイは野球選手だった父に託された夢を拒否して17歳で家出。確執を抱えたまま亡くなった父に後悔の念を抱いている。なぜシューレス・ジョーなのか? 聞こえてくる不思議な声は誰か? その謎がすべて明らかになり伏線が完全につながった瞬間、言葉にならない感動が湧き起こる。

 冒険を共にする伝説の作家テレンス・マンは語る。「野球のグラウンドとゲームはこの国の歴史の一部だ。失われた善が再びよみがえる可能性を示してくれている」。ラスト近く、無言でレイが若き日の父親と青い芝生の上でキャッチボールで心を通わせるシーンはとにかく胸を打つ。

 現在の米国はイラン攻撃、ICEによる移民取り締まりで世界中から非難を浴びている。「古き良きアメリカ」を思い起こすためにも、今こそ見られるべき作品なのかもしれない。

【「メジャーリーグ2」(1994年)】

「メジャーリーグ2」
「メジャーリーグ2」

「うそだと言ってよ、リッキー」。球界の伝説の言葉を模したセリフが登場する傑作だ。クリーブランド・インディアンス(現ガーディアンズ)を優勝に導いた悪童エースのリッキー・ボーン(チャーリー・シーン)が翌年キャンプに真面目ないでたちで現れる。それを見たファンがぼうぜんとつぶやくのが冒頭の言葉だ。

 再び低迷にあえぐチームの起爆剤としてジャイアンツからやって来るのが石橋貴明演じるタカ・タナカなのだが、そんなやつ、サンフランシスコにいたか?と思ったら東京ジャイアンツなのだった。タナカは中盤からの登場で、発するセリフはすべて良い子が口にしてはいけないもの。それが日本語でそのまま楽しめるので痛快極まりない。

 タナカの背番号は16。この映画公開の翌年、野茂英雄がドジャースで同じ16番をつけてメジャーを席巻することになり、米国で公開中には日本の岩手・水沢市(現奥州市)で後の侍ジャパンの16番が産声を上げている。今にして思えば運命的な作品なのかもしれない。

【「プリティ・リーグ」(1992年)】

「プリティ・リーグ」
「プリティ・リーグ」

 人生において初めての親友、憧れ、そして嫉妬の対象、それは妹にとっての姉だった。そんな複雑な感情を抱えながらドティ(ジーナ・デイヴィス)とキット(ロリ・ペティ)姉妹は、田舎町から戦時中に創設される女子野球のトライアウトに向かう。元本塁打王の飲んだくれ監督(トム・ハンクス)のもと奮闘する女子野球物語だ。

 女性の社会的地位がまだ低く見られていた時代、メジャーの大きなスタンドがあるスタジアムにドティらが足を踏み入れるシーンは、女性が外の世界へ足を踏み出すことを暗示しており実に印象的だ。

 厳しい選考の中でここにいるのは敵ではなく、女性としての夢を共有する同志だと認識していくのは文盲のシャーリー(アン・キューザック)を拍手で迎え入れる場面に象徴される。

 ライバルチームに移籍した後、優勝戦に勝ったキットが自ら抱いていた姉へのわだかまりがとける終盤で「愛してるわ、キティ」と抱きしめるドティに、キットは涙ぐみながら「本当に?」と返す。ずっと求めていたものは実はすぐそこにあったのだ。

 ドティとキットの現在をラストの同窓会で演じた女優陣も、当人たちの特殊メークと見まがうほどだ。マドンナ、ロージー・オドネルらの好演も光る。文句なしの傑作である。

【「ナチュラル」(1984年)】

 昨年89歳で亡くなった名優ロバート・レッドフォード主演。監督は88年の名作「レインマン」のバリー・レヴィンソン。1920~30年代を舞台に天賦の才を持つ野球選手の数奇な運命を描く。

 米田舎の農場に育ちながらも、幼い頃から天性の野球の才能を持つ主人公ロイ。20歳になり投手としてシカゴ・カブスの入団テストを受けることに。しかし、道中で知り合った謎の女性に銃で撃たれ、左脇腹に重傷を負う。16年の不在期間を経てメジャー球団ニューヨーク・ナイツに打者で入団。「奇跡のルーキー」としてチームを快進撃に導くが…。

 レッドフォードは大学時代に本格的な野球経験があり、左利きの投打のフォームは堂々たるもので物語にリアリティーを与えている。またレヴィンソン監督は「現実の域を少し超えてところどころに非現実的要素を織り込んだ」と語っている。

 有名な照明直撃弾のシーンは夢のような映像美でつづられており、息子とのキャッチボールをかつての恋人アイリスが見つめるラストシーンは静かな感動に心が震える。