角界の〝超人〟だ。大相撲春場所5日目(12日、大阪府立体育会館)、元大関の関脇高安(36=田子ノ浦)が幕内義ノ富士(24=伊勢ヶ浜)を力強く寄り切って無傷の5連勝。取組後は「理想の相撲でしたね。(初日から)内容がいい」と納得の表情を浮かべた。

 2月28日に36歳の誕生日を迎えても、地力の強さは幕内トップクラスを維持。その土台は、旧鳴戸部屋時代に築かれたものだ。師匠だった元横綱隆の里は、角界屈指の厳格な指導者として知られた存在。高安の兄弟子で、現師匠の田子ノ浦親方(49=元幕内隆の鶴)が当時を振り返る。

「とにかく稽古はやってましたね。早い力士は朝5時過ぎから始まって、終わるのは正午を過ぎるのが普通。全員が50番以上、多い力士で100番ぐらい相撲を取っていた。それが、毎日ですからね。ぶつかり稽古も2回、3回とやるのが当たり前。相撲の稽古をしてからぶつかって、また相撲を取ってぶつかって…」。令和の時代から見れば、まるで〝地獄〟のような稽古量だ。

 年齢を重ねて大ベテランとなった高安は腰に爆弾を抱え、現在は稽古量を抑えて体調管理を優先。それでも、若手時代につくり上げた強固な土台は揺るがない。田子ノ浦親方は「今は無理をさせないようにしているけど、もちろん若いころの稽古が今につながっている。最後まで取り切れれば、必ず結果は出る」とうなずいた。

 昨年の春場所は大関だった大の里(二所ノ関)との優勝決定戦に敗れて涙をのんだ。今度こそ、悲願の初賜杯をつかむことができるか。