「フェス」も「オールスタンディング」もここから始まった。日本のロックシーンの礎を築いた1978年のムーブメント「東京ロッカーズ」。これを題材に、俳優でミュージシャンの田口トモロヲ(68)が制作した映画「ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。」の舞台挨拶が27日、名古屋市のセンチュリーシネマで行われた。名古屋パンクの祖ともいわれる「the原爆オナニーズ」のTAYLOWも駆けつけ、当時を振り返った。

 田口監督は「いま日本ではロックフェスが盛んに行われていて、何万人と集まってるわけじゃないですか。ビジネスとしても成功しているワケですけど、本当にその礎、最初の第1歩を築いた人たちが全く知られていないことに愕然とした。今のフェスやインディーズという方法論はこの人たちから始まっている。これはもう作るしかないなって思いました」と制作意図を明かした。

 原作は写真家であり、当時活動に深くかかわっていた地引雄一氏の名著「ストリート・キングダム 東京ロッカーズと80’インディーズシーン」(1986年初版)。脚本は宮藤官九郎。田口の初監督作「アイデン&ティティ」以来、10年ぶりにタッグを組んだ。

 主役のユーイチ役は、田口作品には欠かせない峯田和伸(銀杏BOYZ)。ほかにも仲野太賀、吉岡里帆、中村獅童、大森南朋、間宮祥太朗、若葉竜也らが揃った。

 最大の魅力は作中に使用されている伝説的バンドの楽曲だ。LIZARD(劇中名・TOKAGE)、FRICTION(同・軋轢)、ザ・スターリン(同・解剖室)、じゃがたら(同・ごくつぶし)、ZELDA(同・ロボトメイア)のライブ音源が多数使用されている。田口監督が「これをやらなければ死んでしまう、というぐらいの切迫感があった」というライブの熱量を落とすことなく、迫力のシーンを作り上げた。

 もう1点欠かせないのは、まるでタイムスリップしたかのようなセットの数々。東京ロッカーズ参加バンドと交流のあったTAYLOWは「一番うれしかったのは、新宿LOFTです。俺らここにいたっていう。もうこの映画見て、自分の青春そのものなので、涙が出そうになりました」と振り返った。当時のチケットやバックパスを大切に保管し持参したTAYLOWに、思わず田口監督は「映画に出てもらえばよかった」と漏らした。

 ロックとはなにか、音楽とはなにか。ユーイチの目線で語られる、わずか1年間、しかし最高に濃密な1年間を記した映画は3月27日から全国で公開される。