現役最強力士の誤算とは――。大相撲初場所9日目(19日、東京・両国国技館)、横綱大の里(25=二所ノ関)が小結若元春(32=荒汐)に一方的に寄り切られて痛恨の連敗。3敗目を喫し、優勝争いから大きく後退した。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(41=本紙評論家)は、大の里の不調の要因を徹底分析。左肩の故障による休場明けの横綱が陥った〝落とし穴〟を指摘した。

 大の里が優勝争いから一転、休場危機に直面している。立ち合いのもろ手突きは威力を欠き、若元春を押し込むことができない。相手得意の左差しを簡単に許すと、一方的に寄り切られた。2日続けての完敗。取組後は「もう一回、しっかり気持ちと体をつくって、あと6日間を取り切るしかない」と自らに言い聞かせるように話した。

 昨年11月の九州場所終盤に左肩を負傷し、千秋楽を休場。今場所前半は1敗で踏みとどまっていたが、前日8日目の取組で異変が起きた。土俵下で審判を務めていた秀ノ山親方は「伯乃富士に電車道で持っていかれた相撲で、大の里は土俵を割る前から顔をしかめていたのが見えた。力士は〝並の痛み〟なら顔に出ない。電流が流れるような痛みが走った時に、反射的に出る表情だった」と証言する。

 この日の相撲内容についても「立ち合いで当たってはいるけれど、圧力が伝わっていなかった。上体が浮き、相手に挟みつけられて持っていかれている。大の里本来の状態であれば、右を差して左で相手の動きを殺しながら前に出るところ。その左が使えていない。力が出ていないし、相撲にならなかった」と分析した。

 今回の大の里は、場所前から調整不足が指摘されていた。全休して次の場所から復帰する選択肢もあった中、なぜ出場に踏み切ったのか。秀ノ山親方は「私が右大胸筋を断裂した時に(復帰前の)稽古で『これなら大丈夫』という感触があった。ただ、実際に本場所の全力を出し切る状況の中で相撲を取ってみると、頭の中のイメージに体が追いついてこない誤算があった。大の里も同様の〝ズレ〟を感じているのでは」と指摘した。

 格下に連敗し、優勝争いのトップとは2差に拡大した。まだ優勝の可能性を残すとはいえ、相撲内容は悪化の一途。2場所連続の途中休場も現実味を帯びてきている。秀ノ山親方は「優勝ラインは3敗ぐらいになるのでは。ただ、これ以上のケガの悪化が心配。お客さんは大の里のスケールの大きな相撲を見に来ている。勝ちを拾いにいく相撲は取れない。あとは師匠(二所ノ関親方)と本人がどう判断するか」。

 現役最多の優勝5回を誇る横綱が、今後の力士人生をも左右する大きな岐路に立たされている。