東京・元赤坂の迎賓館で10月28日、訪日中のトランプ米大統領と高市早苗首相が会談した。
日本側は首脳会談のための準備を十分にできなかった。そこでトランプ氏と良好な人間関係を構築することを唯一の目標にした。トランプ氏と個人的信頼関係を確立していた安倍晋三元首相と高市現首相の連続性を前面に出すことが切り札になると外務省は考えた。
外務省の思惑は高市氏の利益とも合致した。日米間の実質的な懸案が生じないような枠組みで首脳会談を準備していたのだから、成功は予め約束されていた。
今回の首脳会談で最も筆者が評価するのは、高市氏が対ロシア外交で日本の独自性を示したことだ。
<高市早苗首相が28日の日米首脳会談で、トランプ大統領に対し、ロシア極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」からの撤退は困難だとの立場を伝えたことが分かった。米側は液化天然ガス(LNG)を含むロシア産エネルギーの輸入停止を要求しているが、首相は「日本が手を引けば(代わりに権益取得に動く)中国やロシアが喜ぶだけだ」などと説得したという。/政府関係者が29日、明らかにした。サハリン2には日本企業が参画し、日本のLNG輸入の約9%を占める。エネルギー安定供給の観点から、日本政府はかねて撤退に慎重な姿勢を取ってきた>(10月29日、時事通信)。
この報道の内容が正しいことを筆者は複数の首相官邸幹部から確認している。
エネルギーは日本経済の生命線だ。生成AIの急速な展開に伴い大量の電力を消費するデータセンターを多数建設する必要が生じてくる。その際にロシアからのLNGは日本にとって死活的に重要になる。ロシア・ウクライナ戦争後、ドイツ経済が急速に衰退してしまったのは、ロシアからの天然ガス購入を停止したからだ。
高市首相は日米同盟を基調としつつも、日本の死活的利益に関わる問題については対ロシア外交での独自性を担保するという安倍氏の路線を継承している。
日本外務省にはアメリカのバイデン前政権時代の自由、民主主義、人権などの価値観を全面に押し出す外交に対する残滓がある。これと距離を置き、リアリズムに徹した外交を行うことが日本の国益に適う。そのためには、高市氏が強力な政治的イニシアティヴを発揮して、外務省を指導する必要がある。












