今年も健康診断の季節がやってくる。夏でしっかり脂肪を蓄えたので、肝臓もさぞかし肥えたことだろう。しかし「鋼鉄の肝臓」を持つ私は、いつも肝臓の数値がいたって正常。いずれも基準値内だ。だが、ドクターによると「基準値はあくまで統計的に異常が少ない指標」とのこと。なかでも肝臓の細胞が壊れると血中に漏れ出す酵素ALTに関しては、「ALTの基準値である45以下だから良しとせず、30を超えた時点で気をつけて欲しい」とドクターは喚起する。
それにしてもなぜ、ALT基準値の45ではなく30なのだろう? 実は2023年、日本肝臓学会が奈良で開いた総会で「奈良宣言2023」が示され、「ALTは30を超えた時点で要注意」とされたのだ。酒好きにとっては見逃せない「新常識」である。その背景には、現場のドクターたちの経験がある。彼らは診療の際、ALTが30を超えた時点で脂肪肝や、炎症が進んでいるケースを多く見てきた。そうしたことから「基準値だから安心」ではなく、「30を超えたら黄信号」と、生活改善や受診を呼びかけている。
ではどうしてALTの数値は上がるのか? 言わずもがな真っ先に飲み過ぎが挙がる。飲酒は量・度数・頻度に比例して肝細胞を傷め、数値を押し上げる。酒だけではない。つまみに含まれる糖質や脂質の摂り過ぎ、さらには深酒による睡眠の質の低下、休肝日明けのドカ飲みも大きな要因となる。ALTが気になる人は今よりも酒量を減らし、運動習慣をつけるようにしよう。
さて、運動と聞くとフルマラソンや、高強度の筋トレを想像する人もいるかもしれないが、実はこれらもまた上昇要因になる。強度の高い運動直後は、筋ダメージや代謝ストレスでALTが一過性に軽度上がることもあるからだ。検査の採血前48~72時間は激しい運動を控えるのが無難。運動は、長く続けられるウオーキングでも十分だ。
これからは「ALT30超え」という小さな警告を見逃さず、未来の肝臓を守るための黄信号ととらえるべき。「あともう一杯」を控えるかどうかが、ALTの数値を左右する分かれ道だ。












