大横綱の予感だ。大相撲秋場所千秋楽(28日、東京・両国国技館)、横綱大の里(25=二所ノ関)が横綱豊昇龍(26=立浪)との決定戦を制し、13勝2敗で2場所ぶり5度目の優勝を達成。横綱として初めて賜杯を抱いた。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(41=本紙評論家)は両横綱の明暗が分かれたポイントを徹底分析。〝大豊時代〟の本格的な幕開けを歓迎しつつ「大の里の強さが頭一つ抜けている」と指摘した。

 星の差一つで迎えた千秋楽の横綱決戦。大の里が勝てば優勝が決まる本割は、豊昇龍がもろ手突きから一方的に押し出して完勝した。続く決定戦では豊昇龍が左上手を取って投げにいくが、大の里は右ですくいながら体をあずけて寄り倒し。東の横綱が頂上対決を制した。

 大の里は表彰式のインタビューで「(横綱)2場所目で優勝することができてうれしい」と喜びもひとしお。豊昇龍との直接対決には「(本割は)欲が出てしまった自分もいた。なすすべなく何もさせてもらえなかったので、すぐ切り替えた。〝このままでは終わらせない〟ということで、しっかりと最後に勝ち切ることができて良かった」と胸を張った。

 秀ノ山親方は「本割は豊昇龍が前日(14日目)の立ち合いで変化した相撲を取り返すような厳しい相撲だった。決定戦はお互いの集中力が伝わってくるような一番。大の里は本割の立ち合いで出遅れたけれど、決定戦では修正した。受けに回らずにしっかり踏み込んで大きな体をぶつけていった。自分の強みを生かした攻めが光っていた」と相撲内容を分析した。

 千秋楽に横綱同士が賜杯をかけて激突するのは、2020年春場所の白鵬―鶴竜戦以来5年ぶり。秀ノ山親方は「横綱同士の気迫と気迫のぶつかり合い。見ている人がワクワク、ドキドキするような決定戦だったと思う。15日間を通して見ても、両横綱が引っ張る理想的な展開だった」と〝大豊時代〟を歓迎しつつ「やはり、大の里の強さが頭一つ抜けている」と指摘した。

 この日の横綱対決に限れば1勝1敗。結果的に、豊昇龍は12日目から連敗したことが最後に響く格好となった。新横綱から4場所を見ても、いずれも途中で連敗してブレーキ。秀ノ山親方は「勝利への執念は誰よりも強いけれど、気持ちにムラがある。体が小さいだけに、15日間の精神状態の保ち方が課題になるのでは」とV逸の要因を挙げた。

 一方で、今場所の大の里は攻め込まれると引いてしまう悪癖を改善。秀ノ山親方は「今場所はどっしりとした相撲を取っていた。怖がらずにしっかりと前に出ていけば、腰の重さが生きてくる。あとは明確な攻めの形ができれば盤石。まだまだ未完成で伸びしろがあるぶん、さらに強くなる可能性を秘めている」と今後にも大きな期待を寄せた。

 大の里は横綱の地位について問われると「あまり考えすぎずに、今まで通りにやることが全て。今回、いつも通りにできたので優勝できた」ときっぱり。早くも大横綱になる予感が漂ってきた。