【レジェンド雀士からの金言】麻雀プロ界を創造してきたレジェンドの生きざまに迫るインタビューシリーズ。今回は歴代最年長MリーガーとしてKADOKAWAサクラナイツの創成期をけん引し、多くの麻雀ファンを魅了してきた日本プロ麻雀連盟3期生・沢崎誠(70)を深掘り。29歳でプロ入り後、第13期十段位をはじめ、麻雀最強戦2013や第14回モンド名人戦で優勝するなど数々のタイトルを獲得してきたその原動力とは――。

第14回モンド名人戦で優勝(画像提供=MONDOTV(C)2025WarnerBros.Discovery,Inc.oritssubsidiariesandaffiliates.Allrightsreserved./モンド麻雀プロリーグ25/26 第25回モンド杯は9月9日(火)放送開始)
第14回モンド名人戦で優勝(画像提供=MONDOTV(C)2025WarnerBros.Discovery,Inc.oritssubsidiariesandaffiliates.Allrightsreserved./モンド麻雀プロリーグ25/26 第25回モンド杯は9月9日(火)放送開始)

 3人きょうだいの次男として群馬県で生まれた沢崎が上京した1970年代前半は、阿佐田哲也の小説「麻雀放浪記」の影響で空前の麻雀ブームが起きていた。「昼間は配送の仕事をして、夜は東京理科大学夜間部に通う日々の中で麻雀を覚えたのは自然な流れでしたね」

 プロ入りは29歳、日本プロ麻雀連盟の3期生として入会した。

ミスター麻雀こと小島武夫(左)とプロ入りした頃の沢崎
ミスター麻雀こと小島武夫(左)とプロ入りした頃の沢崎

「26歳の時に離婚してから、2、3年はショックで力が抜けちゃって、ぶらぶらしていたんです。そんな頃、大学の先輩から紹介された仕事が、連盟の副会長で初代鳳凰位の島田昭さんが店長を務めていた麻雀店でした。働き始めると小島武夫さんや灘麻太郎さん、森山茂和さん、伊藤優孝さんら連盟のプロたちが来店してくる環境だったんで、プロ入りを意識するようになりました」

 月イチでお店主催のプロアマ大会が開催されており、1年間で11回決勝に行ったという。「先輩プロたちからも顔を覚えられるようになり、連盟に入りたいと言ったら、お前は生意気だからもっと俺のところで修業しろと島田さんから言われ、1年間の修業期間を経て、3期生として入会しました。当時は短気ですぐにカッとなることが多く、本当に生意気だったんです。麻雀のおかげで我慢が利くようになれたんですけどね」と目を細めた。

 若い頃は勝つことだけを無性に追い求めていたという。「プロ入り前後の私は全局アガれば勝てるみたいな麻雀をやってましたから、ポン・チー当たり前のアガリっこ競争みたいな感じでした。勝たなきゃ自分の存在価値はないぐらいに思っていたんです」

 そんな沢崎に衝撃を与えた人物がいた。

「双葉社が主催していた名人戦の予選会場に安藤満さんの応援で行ったんですが、安藤さんの同卓者でリーチを打って一発でアタリ牌が出ても微動だにせず見逃していた人がいたんです。アガればリーチ・一発・トイトイ・三暗刻で跳満なんですが、その数巡後、叩きつけるわけでもなく、音もなくスッと静かにツモって8000、1万6000と言ったんです」

 四暗刻だった。

「そんな打ち方は見たこともなかったんで、なんなんだこの人はと思ったのが、作家の伊集院静さんでした。伊集院さんは私に教えたわけではなく、自分の流儀で打っていただけなんですが、ああいう麻雀を一度は打ってみたいと思いました。もちろんアガる回数が多ければ勝てると思っていた私の麻雀には全然向いていません。でも伊集院さんの技術を盗んで、勉強して、自分のものにしてみたいと心底思ったんですよね」

 以来、沢崎は“独自の練習法”を開始した。

「アガリ回数ではない面白い打ち方があることを知った私は、タイトル戦の決勝も全部見に行くようになり、プロアマ問わずいろんな麻雀のいい技術を取り入れる練習を始めました。とはいえ自分の打ち方を変えることはとても勇気がいることです。誰かの麻雀のいいところ=その人の意志を取り入れることなので、体内にウイルスが入ってくるような感覚です」

 自分にないものを取り入れると違和感があるから、これまでの打ち方は「ぐちゃぐちゃになってしまう」という。

「それでも自分にないと思ったいいところを一つひとつ取り入れ、実際に使いながら調和してきました。自分のものになるまでには時間がかかる練習方法ですが、これが私のベースになっているんです。私のような凡人でもできる練習法なので、誰でもできるはずですけどね」

 衝撃を受けてから40年間、数え切れないほどの技術を自身に取り入れてきた。「自分の型を自分の麻雀とよく言うけれど、そういうものはどんどん壊して、発想を変えていかないと進化していけません。いい時はそのままでいいかもしれないけれど、停滞した時には発想を変えなければ打開することはできません。形あるものはいつか必ず壊れますからね」

 こうして沢崎の麻雀は誰にもまねできない“唯一無二の麻雀”と言われるようになっていった。 ※次週に続く

 ☆さわざき・まこと 1955年1月13日、群馬県安中市生まれ。B型。日本プロ麻雀連盟。主な獲得タイトルは第2期新人王、第13期十段位、第16、27期麻雀マスターズ、麻雀最強戦2013、麻雀日本シリーズ2017、2019、第14回モンド名人戦優勝、第16回モンド王座優勝他。MリーグではKADOKAWAサクラナイツに2019―20シーズンから3年間所属。異名は「マムシの沢崎」。著書は「沢崎誠の強すぎる麻雀経験論」(マイナビ出版)。役満は全種類制覇済み。