子供たちのヒーローは、薬剤師だった!? 「薬飲んで、寝ろ。」の決めゼリフで知られるヒーロー「薬剤戦師オーガマン」と共に薬育(やくいく)プロジェクトを展開しているのが福岡発の老舗薬局チェーン「大賀薬局」のワディP(ポップ)氏だ。ユーチューバーとしても活動し、現場経験を土台に、医療の魅力と正しい知識をユーモラスに発信。〝薬剤師版ホスト〟とも称される異色の広報スタイルで〝令和の薬剤師像〟を体現する、その素顔に迫った。

「ウチは全国展開より地域密着。福岡に100店舗ある方が強いと思っている」。そう語るのは、大賀薬局の広報を担う薬剤師ユーチューバーのワディP氏だ。

 薬剤師として50店舗以上での勤務を経験し、「かかりつけ薬剤師制度」では社内トップの指名数を誇る。「薬を渡すだけでなく、日々の暮らしまで見守るのが薬剤師の役目。信頼されてこそ意味がある」と、多くの現場を知る者ならではの説得力がにじむ。

 転機となったのは2018年。社長から「ユーチューバー、やってみないか?」と声をかけられ、「やります!」と即答。公式チャンネル「大賀よかっちゃんねる」で、薬剤師の日常や健康ネタをユーモアたっぷりに発信。その柔らかな語り口と本質を突く視点は〝薬剤師版ホスト〟と称されることも。「誰にでも刺さる言葉がある。それを探して届けるのが僕の仕事」と笑う。

 特に力を入れているのが「薬剤戦師オーガマン」とのコラボによる園児向け啓発ショーだ。残薬問題や感染予防をヒーローと一緒に楽しく伝えるこの活動は、福岡市主催の「福岡100プロジェクト」にも採択。現在は半年先まで予約が埋まる盛況ぶり。「薬飲んで、寝ろ。」というオーガマンの決めゼリフにも、正しい服薬と休養の大切さが込められている。

 活動は幼児にとどまらない。小学校高学年を対象としたキャリア教育にも取り組み、薬剤師の仕事ややりがいを紹介。「薬局は、ただ薬をもらう場所じゃない。その背景にある思いや支える人々の存在を知ってもらいたい」。講演活動は年間100回を超え、小学校から大学、地域の勉強会まで幅広く対応。「正しい情報も、共感がなければ届かない」と、伝え方の重要性を説く。

 そんな彼の行動理念を裏打ちするような出来事も。ある日、母親に連れられた子供が薬局で突然けいれんを起こした。周囲が戸惑う中、「自分が行くしかない」と勇気を出し、「大丈夫ですよ」とパニックになっていた母親を安心させて、子供を抱えて病院へ駆け込んだ。「ありがとう、と言われた瞬間、薬剤師としての存在意義を感じた」と振り返る。

小学生の前で〝出前授業〟をオーガマン(右)と行う薬剤師でユーチューバーのワディP
小学生の前で〝出前授業〟をオーガマン(右)と行う薬剤師でユーチューバーのワディP

 ユーチューブ活動では、その言動を保健所に通報されてしまった経験もある。「でも、ネガティブなコメントにも丁寧に返信しています。一人の人間として向き合えば、ファンになってくれて伝わることもある」。そこにも、地域とのつながりを大切にする姿勢が表れている。

「年齢を重ねても新しいことに挑戦する大人でありたい。それが誰かの〝自分もやってみよう〟につながればうれしい」。ワディP氏の視線は常に未来を見据えている。

「薬局が安心を受け取る場所になったら最高。福岡からそんなモデルを発信したい」。届けているのは薬だけではない。人々の暮らしを支える処方箋としての〝安心〟そのものだ。