柔道男子100キロ級で2021年東京五輪金メダルのウルフ・アロン(29=パーク24)が10日、新たな世界に飛び込む決意を明かした。8日の全日本実業団体対抗大会を最後に現役生活を終えたウルフは、引退会見で今後に関して「表に立ちたい気持ちが強い」と明言。かねてささやかれてきたプロレス転向も浮上する中、ウルフが自ら挙げた〝課題〟とは――。

 全日本実業団体対抗大会(8日、北海道)を最後に現役を退いたウルフはこの日、都内で引退会見に出席した。史上8人目となる「柔道3冠」(全日本選手権、世界選手権、五輪)に輝くなど、日本の重量級をけん引した男は「柔道は人生そのものだった」と晴れやかな表情で振り返った。

 現時点では「やっぱり僕はまだ自分自身が表に立ちたい気持ちが強い」と指導者への道は消極的。今後に関しては世界選手権(13~20日、ブダペスト)後に発表する場を設ける意向だが、次なる目標は「ある程度自分の中では定まってきている」と明言した。

 注目は、やはり日本初となる金メダリストのプロレス転向があるのかだ。新日本プロレスの棚橋弘至社長からラブコールを送られ、ウルフ自身も昨年9月に永田裕志のYouTubeチャンネルに出演した際に前向きな発言を繰り出した。今年の1月4日東京ドーム大会では特別ゲストとして放送席にも座っている。

 会見後も取材に応じたウルフは、プロレス談議にも気さくに対応。内藤哲也とBUSHIが退団した新日本について「これからどうなっていくのかなっていうのは気になってますね。内藤さんが新たに『ロス・トランキーロス・デ・ハポン』を立ち上げたってことなので、注目したいと思います」と目を輝かせた。

 さらに具体的な進路に関しては明言を避けたものの、次のステージに進むために何が必要かを冷静に分析した。「良くも悪くも今まで柔道しかやってきてないので。柔道でのクセみたいなものがあって、気持ち的な部分でもトップとしての自尊心があるじゃないですか。体の動きにしても柔道家っぽい動きになっているところがあるので、そういったものを一回捨てて、柔軟になっていかなきゃいけないなって」とキッパリ。「それはこれから何をするにしても思いますね。変なプライドって本当に邪魔になるだけなので。一から柔軟に考えて、新しい自分の形というものは作らなきゃいけないと思います」と、心身のリニューアルを掲げた。

 引退会見に同席したパーク24の吉田秀彦総監督は、柔道引退後に総合格闘技の世界でも活躍した。ウルフは「柔軟なところは柔軟に、自分の信念はしっかりと持ちながら生きてきた上での結果だと思うので。そういうところはやっぱり見習いたいと思いますし、今度食事に行くタイミングもあるので、そういうお話をできたら」と第2の人生への助言を授かるつもりだ。

 畳を降りたウルフが次に立つ場所はリングか、それとも――。柔道界きっての人気者の次なる挑戦から目が離せない。

 ☆うるふ・あろん 1996年2月25日生まれ。東京都出身。父は米国出身で母が日本出身。ウルフタイムと称される抜群のスタミナを武器に、2017年世界選手権100キロ級で金メダルを獲得。19年には無差別級で争われる全日本選手権でも頂点に立った。21年東京五輪では100キロ級で00年シドニー五輪の井上康生以来となる金メダルを獲得。史上8人目となる「柔道3冠」に輝いた。24年パリ五輪は混合団体で2大会連続の銀メダルに貢献した。身長181センチ。