オーストラリアのラジオ局CADAがリスナーに気づかれずに6か月間もAIパーソナリティーでラジオ番組を制作していたとして、批判を受けている。ただし、パーソナリティーがAIであることを公表すべき法的義務はなかった。豪州紙シドニー・モーニング・ヘラルドが先日、報じた。
オーストラリアン・ラジオ・ネットワーク(ARN)のシドニーを拠点にしたCADA局が昨年11月から「ワークデーズ・ウィズ・Thy(ザイ=あなた)」を放送している。Thyという若い女性パーソナリティーが月曜日から金曜日まで、1日4時間、音楽番組を担当し、何のミスもなく、順調だった。
ところが、謎に包まれたThyについて人々が疑問を抱き始めた。プロフィルが存在せず、彼女が使う特定のフレーズが毎回同じに聞こえるのだ。
番組の公式サイトには、単に「仕事中、運転中、公共交通機関で通勤中、または大学にいる間、世界中の最もホットなトラックを再生します。もしあなたの一日がちょっとつまらないと感じているなら、ThyとCADAがあなたの気分を高揚させるエネルギーと雰囲気を与えます」と書かれている。画像を見るとThyはアジア系女性のようだ。
シドニー在住の作家が、Thyが実在の人物であるかどうか疑問視し、ブログに「Thyさんの名字は何ですか? 彼女は誰ですか? どこから来たのですか? このショーの司会者とされる女性についての経歴や詳細情報は一切ありません」と記したことで、正体が初めて明らかになった。
これにARNの広報が「CADAで、ARNチームメンバーの声を使ってAI音声ツールを試験的に導入しました。これは世界中の放送局が検討している分野であり、今回の試験運用を通じて貴重な知見が得られました」と発表した。
また、AIオーディオの研究と展開に従事する会社「ElevenLabs」は「ThyはElevenLabsのAI音声技術で作られました。彼女はARNメディアの財務部門の社員をベースにしており、声の使用に同意を得ています」と明かした。
ARNはAIの使用を開示せず、リスナーにThyが実在の人間であると信じ込ませたとして批判を受けている。
さらにシドニー・モーニング・ヘラルド紙は「失望はさらに深まった。この仕事に就けるアジア系オーストラリア人女性司会者は限られているので、そのうちの誰かにチャンスを与えればいいのだ。ただでさえ苦労している少数派から、この機会を奪わないでほしい」と記した。
ただし、オーストラリア通信メディア庁は「現在、放送コンテンツにおけるAIの使用に関して具体的な制限はなく、その使用を開示する義務もない」と述べている。











