オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第226回は「口裂け男」だ。

 文字通り口が耳元まで裂けている妖怪である。「口裂け女」がブームになった昭和52年(1977年)ごろから、存在がささやかれていた。当初は単に口裂け女に付き添っている男と呼ばれ、名前はついておらず、そのうち昭和53年ごろに「口裂け男」という安直な名前がついた。口裂け女と同じく、ポマードを恐れるあまり、化粧品店に恐怖心を持っている。

 口裂け男の出てくるパターンはセオリー化しており、決まっている。夜道において、マスクをかけた男が話しかけてくる。「ちょっと、君に話があるんだ」。女性が立ち止まると、「ところで、僕はきれいですか?」と聞いてくる。「き、きれいですよ」と女性が回答すると、「ほら、これでも?」と言ってマスクを外して、裂けた口を見せるのだという。

 あくまで口裂け女のパートナー的存在であり、その性質はおとなしい。口裂け女が比較的、ヒステリックで狂気的なのに対して、口裂け男はロマンチストである。中には、口裂け女とラブロマンスを展開する話も存在する。

 その姿として、両腕がハサミになっているパターンも存在する。これなどは「かまきりおばさん」と酷似している。あるいは、映画「シザーハンズ」のキャラクターの影響を受けている可能性が捨てきれない。