世界基督教統一神霊協会(以下、統一教会)の信者で全国拉致監禁・強制改宗被害者の会代表の後藤徹氏(50)が12年5か月間にわたって監禁され、棄教を強要されたとして総額2億161万8527円の損害賠償を求めた民事訴訟で、東京地裁(相澤哲裁判長)は28日、後藤氏の親族ら被告に対し、483万9110円の支払いを命じる判決を下した。統一教会側の勝訴となった。
後藤氏は大学4年時の1986年、統一教会に入会。ところが、それに反対する両親、兄夫婦、妹が脱会説得の専門家である宮村峻氏とともに後藤氏を監禁し、脱会を強要した。後藤氏は12年5か月もの間、外出の自由を奪われただけではなく、信教の自由を侵され、2001年、兄夫婦、妹、宮村氏らを相手に訴訟を起こした。事情を知る関係者の話。
「ここは信教の自由や基本的人権が認められた法治国家のはず。いくらなんでも脱会させるために約12年もの間、監禁していいはずがない。後藤さんは栄養失調や、廃用性筋萎縮(筋肉を長期間使わず萎縮が起こること)などの傷害を受け、入院するまでになった」
統一教会といえば、さまざまな問題を報じられているため、世間のイメージが悪い。それゆえに脱会のためには、何をやっても許されるという風潮があるのは確かだ。また、宗教や家族の絡む問題に警察の動きも鈍く、なかなか被害の実態がわかりにくい。後藤氏のケースでも当初刑事告訴したが、不起訴処分となり、民事に切り替えた経緯がある。
原告側の福本修也弁護士は「拉致や監禁の責任を認める司法判断はこれまでなかった。そういう意味では、大きな一歩です」と一定の評価を与えた。「おびえなくても信仰を持つことのできる日本になってほしい」と訴えた後藤氏。判決内容にはまだ不服な点があるとして、陣営は控訴するつもりだという。