【Buzzの本懐】ニッチな内容とマスコットの〝本音〟で人気を集めるユーチューブチャンネル「有隣堂しか知らない世界」へのインタビュー。中編では制作チームが実際に感じたという爆発的な人気や、「ターニングポイント」になったと感じる動画についてもじっくりと話を聞いた。
――これだけ登録者数が増えると、人気を実感することも多いのでは?
渡邉郁氏(有隣堂=以下渡邉)全国に知ってもらえているという感触はありましたね。わざわざ「ゆーりんちー」(チャンネルファンの愛称)の方が、北海道から沖縄まで全国から伊勢佐木町に来てくださるので。さらには韓国やオーストラリアといった、海外からのファンの方もいらっしゃって、本当にすごい変化だなと思いました…。
――もはや「社会現象」ですね
ハヤシユタカ氏(動画プロデューサー=以下ハヤシ)現象ということで言ったら、〝神戸阪急店〟が一番ビックリしましたよ…
渡邉 ユーチューブの活動が順調だったこともきっかけのひとつで阪急さんからお声がけをいただいて、10月に神戸阪急店をオープンしたんです。そこでオープン日にブッコローによる呼び込み企画を実施したら、お客様が殺到しまして。すごい行列がブッコローの前にできたんです…。
ハヤシ 当時現地にいた友人いわく、ブッコローのぬいぐるみを持った人たちの行列が、阪急さんの開店とともに8階の有隣堂に一目散に向かっていったと…。それが関東から遠く離れた神戸の町で起きたということはにわかに信じられなかったですね。
渡邉 何人もの方に「神戸に来てくれてありがとう」と声をかけていただいて、こちらも恐縮していたのですが、その後私の前にもツーショット撮影を求める行列が…。最終的に現地にいた岡﨑、私、ブッコローのそれぞれに人だかりができました。
――その一方でブッコローさんは〝ミミズク〟として活動されている以上、あまり人間界で反響を感じることはないのでは?
R.B.ブッコロー氏(大人気マスコット=以下ブッコロー)それはうれしくもあり、さみしくもありですけどね。ただここまでのチャンネルになってくると気楽さの方があるかな。
――動画でも話題に上がる実のお子さまは「ブッコロー」であることを理解されているのですか?
ブッコロー 分かってはいますよ。妻が娘に「今日パパはブッコローの日だから」って言ってますし、YouTube Liveも見てくれていますから。あとは本好きの義父も毎回チェックしてくれてますね。この前ゲストで出演された北方謙三先生のサインを渡したら、チビりそうな顔してましたよ。
〈一同笑い〉
ブッコロー 郁さんとこはどうなの、子供が友達に「お前の母ちゃんユーチューバー!」とか言われてないの?
渡邉 そんな子は今時いませんって…。うちの家族は何の抵抗もなく受け入れてくれていますね。ただ子供の担任の先生がチャンネルを知っているそうで、個人面談はちょっと恥ずかしいです。
――ご家族も理解があるようで一視聴者としては安心しました。それでは皆さんの中でターニングポイントになった、または忘れられないと感じる動画はありますか?
渡邉 私は〝職業作家の1日〟ですね…。
ブッコロー それはそうだよね、郁さんが持ってきた企画だし。
渡邉 私の執念が実ったといいますか…。ずっと作家の先生に出演していただきたかったんですけど、それこそ国民全員が知っている作家さんじゃないとユーチューブではなかなか〝刺さらない〟と言われていまして。
――確かに本好きかどうかで、作家に対する反応は割れそうです
渡邉 その点で当時ご対応いただいた中山七里先生は、著名なミステリ作家さんだったことに加えて、とても筆が速い上に短い睡眠しか取られないという執筆スタイルでも有名な方だったんです。そこで先生の1日に密着させてもらうという内容をユーチューブチームに提案したところ、OKが下りまして。最終的には先生のご自宅で取材させていただくことになりました。個人的な思い入れという面でも、その後の反響という面でも、ターニングポイントだったと感じています。
――ハヤシさんからしてもこの回の印象は強かったのでは?
ハヤシ そうですね、僕も1つ上げるとしたら郁さんと同じでこの動画になるのかな。本についての動画は、書店である以上いつかはやらないといけないとは思っていたんです。ただ膨大な情報量が活字で載っている本と、情報をシンプルに絞って伝える動画は相性が悪いんですよ。
――作家とのコラボに関しても消極的だったのですか?
ハヤシ 中山七里先生の話が上がった時も、最初はGOサインを出せなかったですね。作家の先生のお話に内容を絞って、再生回数が伸ばせるのかという懸念があって。それでも郁さんが〝密着動画〟を提案した時、「確かにそれは気になるぞ」と面白さを感じて、一気に企画として動き出しました。結果的にチャンネルの中で一番再生される動画になったのは本当に良かったですよ。外部から来た僕がダメだと思っていたものが、社内の郁さんのアドバイスで魅力的なコンテンツに生まれ変わったということは、社にとっても素晴らしい事例だなと思っています。
――当日中山七里さんと対談したブッコローさんは、緊張されなかったのですか?
ブッコロー それまで社内の方ばかりだったところに、突然有名な作家の先生がゲストとして来たぶん、緊張感はありましたよ。無理に踏み込んだことを言ってゲストの機嫌を損ねてしまってはMCとして良くないし…。とはいえ視聴者の方が普段思っていることや、動画を見て気になるであろう部分はツッコみたいとも思っているんです。後々「なんでブッコローはあの話を聞いてくれなかったの」と指摘されるのも悔しいじゃないですか。だから中山先生にも「ゴルフばっかりやってる経営者みたいな顔ですね」とは言っちゃいました。
――そんなブッコローさんの中で印象に残っている動画は…
ブッコロー 僕は、ないかな…。
ハヤシ ないのかよ!
渡邉 ないんですか⁉
ブッコロー ないんですけど、あえて別の視点から上げさせてもらうと、初回から10作品ぐらいまでが僕の中では大きかったんですよ。
――活動初期に思い入れがあるということですね
ブッコロー 実はこのチャンネルって、平均しても1時間強かかっている撮影を、7~8分に編集しているんです。要は一生懸命やったことが10%になるので、最初は正直不安で。「ウケてたところがカットされてるな」とか、「ここはカットしておいてくれよ」と感じることがあるのかなと。ところが何本動画が出ても、僕が思っているより面白いんですよ。編集で流れが逆になっているところがあっても、そのぶん端的に、分かりやすくなっていたりする。動画に感動することはあっても、失望することは一度もなかったんです。だからこそ「この回が特に面白い」とはならないのかな。
――常に想像以上の内容になっているということでしょうか
ブッコロー そうですね。ただ最近はアップされたものを見て、もうちょっと面白いことを言ってたんじゃないかって思う時はありますね…。僕も年だし、そう思い込んでいるだけなのかもしれないけど(苦笑)。
(後編はまだファンに伝えられていないという魅力や今後の目標について)
【有隣堂しか知らない世界】神奈川県を中心に展開する老舗書店チェーン・有隣堂が開設したユーチューブチャンネル。様々なジャンルに精通した社員やゲストと、ミミズクのマスコット・ブッコローの軽妙なやりとりが人気を呼び、チャンネル登録者数は26万人を突破している。














