駆ける駿馬の馬上から矢を的に射る「流鏑馬(やぶさめ)」に情熱を注ぐ“流鏑馬アイドル”の月乃菜々(選手名・星野菜々)の注目度が高まっている。女性による競技大会「桜流鏑馬(さくらやぶさめ)」の初級クラスで優勝、世界大会でも優勝を収めた実績を持つ。流鏑馬に出会うまで「馬に乗ったことも、矢を放ったこともありませんでした」という月乃は愛馬「飛(とび)」とのタッグで挑戦し続けている。
会社員だった月乃は「馬事文化を応援する」というコンセプトで結成されたアイドルグループ「桜花のキセキ」(解散)のメンバーに選ばれ、アイドルに転身した。
流鏑馬に出会ったのは2019年。横浜・赤レンガ倉庫で開催された「馬」がテーマのメッセに、青森県十和田市の十和田乗馬倶楽部が「桜流鏑馬」のブースを出展していた。
「実は2019年に開催される桜流鏑馬が私の誕生日(4月21日)だったんです。それを知って『絶対に出たい!』と思ったんです」。流鏑馬との“運命的な出会い”を感じていた。
とはいえ、馬に乗ったことも、矢を放ったこともない。ましてや馬上で手綱から手を離し、弓を構え、的を射るなどとてもできそうにない。しかし、流鏑馬への情熱はもう止まらなかった。4月の桜流鏑馬参加は練習時間が十分に取れないため見送ったが、同年8月の新人戦を目標に計画をスタートした。
「やっぱり練習環境などを整えるのも難しくて。2週間前から合宿で練習みたいな(苦笑)。周囲からも『無理だろう』と言われていたみたいなんですが、その新人戦では9人中3位になることができました」
その後コロナ禍もあり、1年間は流鏑馬から遠ざかってしまったが、熱い思いはそのままだった。21年4月に開催された桜流鏑馬に出場し、3位入賞。同年10月に青森県で開催された世界大会「世界流鏑馬選手権」の初級クラスで優勝を収め、翌年4月の桜流鏑馬の初級でも優勝した。
日常的に馬に乗れる環境にはない月乃は差を埋めるため、自宅での練習も工夫したという。
「本物の弓を使うことはできないので、ゴム弓で練習して。馬上でのバランス訓練では、騎手の方が『一本歯下駄』で練習しているっていうのを聞いて。下駄を買って、手綱を玄関のドアノブに掛けて、体幹を鍛えてました。家でやれそうなことは全部やりました」
ここまで結果を残せている理由として、ずっとタッグを組む愛馬「飛」の存在は欠かせない。
「飛は完璧な馬です。スタートとゴールが分かっているし、乗る人の力量に合わせて、走るスピードも自分で調節するんです。飛がいなかったら優勝などできませんでした」と感謝するばかりだ。
流鏑馬がきっかけで競馬も好きになったという。「パドックでのボロ(馬糞)の大きさで馬のメンタルが分かるようになってきたかもしれません。小ボロは緊張の証拠ですが、私は人も馬も緊張を力にできると思っているので、パドックで小ボロをした馬は『程よく気合が乗っている!』と買います!」と笑った。
今後の目標は、競技流鏑馬の第一人者で師匠の上村鮎子の“境地”に達すること。「師匠である上村鮎子さんのように『負けて悔しい』って思えるようになること。いまは『しょうがない』ですからね」と力を込めた。
☆つきの・なな 4月21日生まれ。群馬県出身。O型。選手登録名は星野菜々(ほしの・なな)。特技は旅のしおり作り、歯笛。一度は会社員として働くも、アイドルになりたいという夢をあきらめきれずに、馬事文化を広めることをコンセプトとしたアイドルグループ(現在は解散)のメンバーとしてデビュー。その時に流鏑馬と出会う。6月25日にはEDOCCO STUDIO公式アイドル「Mikoto」新メンバーとしてデビューした。














