〝大関昇進ラッシュ〟はなるか。大相撲名古屋場所は7月9日に愛知県体育館で初日を迎える。今場所は新大関霧島(27=陸奥)が誕生した一方で、大栄翔(29=追手風)、豊昇龍(24=立浪)、若元春(29=荒汐)の3関脇が大関昇進をかけて15日間の戦いに挑む。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(39=本紙評論家)による連載「がぶりトーク」では、注目のトリプル大関取りの行方を占った。

【秀ノ山親方・がぶりトーク】読者のみなさん、こんにちは! 名古屋場所の新番付が発表されて、いよいよ初日まで2週間を切りました。新大関の霧島や新入幕の伯桜鵬ら楽しみな力士が多い中で、やはり一番の見どころは3関脇による大関取りではないでしょうか。大栄翔は11勝、豊昇龍と若元春は12勝すれば、大関昇進の目安(三役で3場所合計33勝)に届く。全員にチャンスがあると思います。

 大栄翔は自分の立ち合いを確立できている印象です。出足の瞬発力は幕内上位の中でもトップクラス。押すべきポイントを把握していて、どんな相手にも迷いなく突き放しにいける強みがある。優勝経験がある一方で、春場所では本割と決定戦で連敗して悔しい思いもしている。誰よりも1勝の重みを知っていることが、勝負どころで生きてくるはずです。

 豊昇龍は運動神経がずば抜けていることに加えて、気持ちの強さがある。どんなに地面スレスレでも「絶対に土俵につかない」という執念を感じさせるし、勝負に対する貪欲さは叔父さんの朝青龍関と姿が重なります。期待を込めて課題を挙げれば、立ち合いで時折変化を見せること。小手先で1番は拾えても、10番は拾えない。そういうことも学びながら上を目指してほしいですね。

 若元春は自分の四つ相撲の形に自信を持っていますよね。仕切り線と平行ではなく、左足を前、右足を後ろへずらして、得意の左四つに組み止めやすくする立ち合いを確立している。相撲に力強さがあって、体も柔らかい。しっかりと足で地面をかんでいるので、体の軸がブレないことも強み。スケールの大きさを感じさせる力士です。

 それぞれの力士はお互いにライバル意識を持っているだろうし、霧島が新大関になったことも大きな刺激になっているはず。大関の座を争っていく上で、ポイントの一つになるのが直接対決です。何度も対戦して相手の強みを知っている中で「俺の方が強い」と信じて迷いなく踏み込めるか。最後は結局、精神面の勝負になってくる。チャンスを自分でつかみにいく強い気持ちを持って臨んでもらいたいと思います。

 大関取りが3人ともなると、どうしても星の潰し合いになるので、全員が同時に上がる確率は低いかもしれません。それでも、実力的に見て複数の力士が同時に昇進する可能性は十分にあるのでは。自分の相撲を悔いなく取り切って、場所を盛り上げてほしいですね。

 3関脇には、それぞれ性格にも個性がある。大栄翔が寡黙なら、豊昇龍は目をギラギラさせていて、若元春はひょうひょうとしたイメージ。ファンの方たちは、そういったキャラクターの違いに注目しながら観戦するのも面白いかもしれませんね。それではまた!

(元大関琴奨菊)