大変身、成功! 昨年6月の武尊戦に勝ってキックボクシングを卒業した〝神童〟那須川天心(24=帝拳)がボクサーとして一歩目を踏み出した。9日に東京・後楽園ホールでB級プロテストを受験し、スパーリングなどを経て合格。その様子を見守ったキック時代のホームリング「RISE」の伊藤隆代表(52)は進化を遂げた神童の姿に感嘆。さらにテストで見せた才能の片りんを、ボクシング界きっての論客で元日本スーパーライト級王者の細川バレンタイン氏(41)が徹底分析した。

 プロテストでは筆記やシャドーも試験対象となったが、何よりも注目を集めたのはスパーリングだった。日本バンタム級1位の南出仁(27=セレス)と向き合い、3ラウンド(R)打ち合った。9戦7勝5KOを誇る相手に1Rからステップを刻みつつ、得意の右ジャブで攻撃。立体的に体を振って相手を翻弄しつつ、鋭い左フックをさく裂させるなどランカー相手に一歩も引かずに実力の一端を示した。

 無事、合格証書を受け取った神童は「何かに合格するのは、やっぱりうれしいです。こういう試験みたいなのって、高校受験以来なのですごい新鮮です」と安堵の表情。スパーリングで日本1位の選手と互角以上に渡り合ったことに「自信になります。これで本気度が伝わったと思います」と手ごたえをつかんだ様子で、タイトルを目指す思いを改めて口にした。

 そんな那須川を見ていた伊藤代表は「久しぶりに天心を見て『ボクサーになったなあ』と思いましたよ。デビューが楽しみです。いいスタートを切れよって思いますよ」と感慨深げだ。キック時代は「TARGET」の会長と所属選手の間柄で練習の姿も見ていただけに「スタンスも変わってすごく重心も落ちていたし、脚も細くなった。脚はボクシングでは無駄な筋肉なので。蹴らないで走り込めば細くなるんです」と、キックボクサーからボクサーに、見事に変身を遂げた那須川の現状を語った。

 一方、ボクシング界からもこの日、那須川が見せた才能を称賛する声が上がった。外資系金融機関の営業マンとの二足のわらじで王者になり、現在は会社経営の傍ら公式ユーチューブチャンネル「前向き教室」で発信を行う細川氏だ。「南出はかなり強い選手なんですよ。その南出を相手にしたスパーリングだけを見れば、現時点でも日本チャンピオンレベルには全然あると思いました」と太鼓判を押す。

 特に那須川が発揮した強みは守備面だという。「多分、那須川は一発ももらってないと思います。あとはハンドスピードが速い」。スパーリングを通して「僕には、天心が圧倒しているように見えました。今回のような動きを、例えばバンタム級(世界ランカー)の石田匠とか西田凌佑といった選手にもできたら、いよいよ化け物ですよ」と期待を寄せた。

 一方で、攻撃力については「天心のパンチをもらっても南出仁がひるんでいなかった」と指摘。世界バンタム級4団体統一を果たし、スーパーバンタム級への転向を表明した〝モンスター〟井上尚弥(大橋)を引き合いに「特筆すべきなのは、尚弥のスパーはパンチをもらった瞬間に相手がひるむことなんですよ。ヘッドギアを付けていても。それが外から見ていても分かる」と説明した。ただしプロテストのスパーリング3Rのみでは計り知れない部分が多いだけに、「その未知数な部分はこれからの楽しみとも言えるでしょう」と語った。

 未知数な部分を残しながら、大きなワクワク感を人々に与えた那須川のはじめの一歩。細川氏はその可能性を「当然、いずれは世界も期待できると思います」。再びその拳で日本を熱狂させるべく、新たなジャンルでも勝利を重ねるつもりだ。