広域強盗事件の指示役「ルフィ」の一味4人が7日と9日、2人ずつフィリピンから強制送還された。機体が日本領空内に入ったところで、警視庁に窃盗容疑で逮捕された。

 移送に使われたのは日本航空の定期便で、ともにボーイング767―300ER型機の国際線仕様機「スカイスイート767」。偶然にもこの飛行機は昨夏、人気アニメ「ONE PIECE(ワンピース)」をテーマにしたチャーターフライト「伝説の大鶴と空の冒険」で使われた機体だった。

 150人あまりを乗せたこのチャーター機は、昨年7月30日、千葉・成田空港を午後3時前に離陸。本州上空を飛び大分で折り返し、四国、和歌山、三宅島と飛行し、午後6時すぎ成田へ戻った。ワンピースの主人公・ルフィが食べ、ゴム人間になる「ゴムゴムの実」にちなみ、搭乗客には「JAL5656便」とアナウンスされた。

 また、そのルフィにはフィリピンとの接点があった。

 漫画の中で、ルフィが育った場所として描かれているのは「グレイ・ターミナル(不確かな物の終着駅)」という場所で、通称「ゴミ山」。文字通り、ゴミの山に囲まれ劣悪な環境のスラム街だ。そのモデルとなったのが、フィリピンの首都マニラ北方にかつてあった、巨大なゴミ山とその周辺のスラム街「スモーキーマウンテン」なのだ。

 週刊少年ジャンプでワンピースの連載が始まったのは1997年。その2年前にはフィリピン政府がこのゴミ捨て場を強制閉鎖したが、いまだ約100世帯が暮らしているとされる。単行本「ワンピース62巻」(2011年発売)の質問コーナーで、グレイ・ターミナルのモデルはスモーキーマウンテンか聞かれた作者の尾田栄一郎氏は、「そうです当たりです」と回答。こう続けている。

「現実っていうのは、僕らの想像を超える風景というものがたくさんあるもので、ゴミ山が燃えて煙を上げている。これは、実際にある景色なんです。そこには本当にたくさんの人々が生活しているのです。漫画で扱ったのは表面的なもので、リアルなゴミ山の暮らしは実際病気も蔓延しているし、その辺で死体を見かけることも日常、その生活から抜け出したくても漫画のようにはいきません。僕が語っても薄っぺらいので、知りたい人は調べてみてください」

 主犯格とみられる渡辺優樹容疑者(38)はワンピースが大好きだったと、20年来の知人が女性誌の取材で明かしている。「ルフィ」の名を犯罪に利用した理由は、今後の捜査に委ねられることになりそうだ。