巨額投資トラブルの渦中にある「TKO」木本武宏(51)が23日に都内で開いた謝罪会見で、注目を集めたポイントの一つが、木本が投資家に刑事告訴をチラつかせた点だ。

 木本はFXトレーダーのA氏に約1億7000万円、不動産投資を手掛けるB氏に約5億円をそれぞれ預け、両氏と一時連絡が取れなくなった。現在は両氏とも連絡が取れているという。

 ただ、木本はB氏について「明言はできないですけど、『(投資の)実態がなかった話じゃないか』と(報告が)耳に入っています」と説明し、詐欺だったのではとの認識を示した。 

 被害を取り戻すことを優先し、B氏からの返金を待つそうだが、「正直、連絡がついたりつかなかった時期を何度も繰り返している。(返済を)待つんですけど、これが最後の待つという姿勢にするつもりです。約束が果たされなかった場合には刑事告訴、法的手段を取るつもり。その時はすぐに行動に移したいので準備も始めています」と明かした。

 とはいえ、木本自身も知人に話してA、B両氏に計約6億7000万円を預け、被害額が拡大した面もある。今回の事案では、木本に民事責任があるかどうかも焦点だろう。

 いわゆる共同不法行為(民法719条)で、複数の人が関与して他人に損害を与える行為。共同不法行為が行われた場合、加害者は被害者に対して連帯して責任を負わなければいけない。

 アディーレ法律事務所の長井健一弁護士は「共同不法行為が成立するためには、各行為者が不法行為の要件を備えており、行為者の間に共謀は必要なくてもそれぞれの行為が客観的にみて一体となって損害を生じさせたといえることが必要です」と解説する。

「今回の件の詳細が分かりませんが」と断ったうえで「木本さんの紹介とB氏の詐欺行為が一体と判断されれば、共同不法行為が認められる可能性があります」とした。

 また、詐欺と認識しながらB氏を告訴しないことには「被害者への返金のための行動であれば、そのような考え方もありだと思います」と指摘。「詐欺自体は親告罪でないので本件の場合、告訴がなくても捜査や公訴提起はできるので犯罪を放置したとの批判はあたらないと思います」と説明した。