いざ、有終の美へ――。空手女子組手68キロ超級の植草歩(30=JAL)が、本紙インタビューに応じ、競技者として〝終活〟を開始したことを明らかにした。金メダル候補として期待された2021年の東京五輪はまさかの1次リーグ敗退。その後は気持ちの整理がつかないまま日本を飛び出し、自らの「仮面」を外すきっかけを見つけたという。24年パリ五輪で実施競技から外れた空手を極めるヒロインが選んだ引退ロード、さらにはユーチューブでコラボが実現したプロレスへの思いも語った。
――昨年は国内外の大会に復帰した。東京五輪を終え、すぐに切り替えられたのか
植草 正直、半年ぐらいは難しかったですね。日本にいたら何をどう変えたらいいかも分からず、競技を続けたいのか、引退したいのかも含めて。そこで環境を変えないとダメだなと思って(昨年の)2月から3か月、海外に行ってきました。
――どこの国に
植草 米国、カナダ、オランダ、アゼルバイジャン、モロッコといろんな国を転々としました。日本と違う文化や世界情勢、差別、空手の文化もですけど、いろんな部分を見ることもできた。それから英語は流ちょうに話せるわけじゃないんですけど、自分が伝えたいことは伝えられるようになって帰国したので、それだけでも見える世界が変わったと思います。
――モロッコ・ラバトでは、東京五輪以来9か月ぶりの実戦となったプレミアリーグで優勝した
植草 その大会に出るのもすごく不安で。負けて何か言われたらとか、植草は終わったと言われるのが怖かったけど、海外を回ったことで空手との向き合い方が少し変わったんですよね。
――どう変わった
植草 今まではSNSで前向きなことを発信したり、ファンや見てくれる人の光になりたいと思っていたけど、その中で弱さというか「アスリートもこんな気持ちになるから大丈夫だよ」と伝えたいと思いながら試合に臨みました。そして結果も出た。私にとっては収穫でした。
――〝こうあるべき〟という姿を見つめ直した
植草 五輪まではずっと勝つことが当たり前としてやってきて、自分も競技者として負けたくないという気持ちでやってきました。でも、そこにとらわれ過ぎると本質が見えなくなってしまうのかなと。楽しくやるとか、駆け引きを楽しむとか口にしていたけど、結局本心ではなかった。こうして心や体を壊してしまう選手もたくさんいると思います。
――次に目指す舞台は
植草 パリ五輪で空手はないので今までのように五輪を目指すことはできませんが、世界選手権(10月、ブダペスト)があるので、もう一度そこで優勝したいという思いはあります。
――世界選手権で現役生活に区切りをつける考えか
植草 自分がどんな気持ちになるのか、まだ分からないというのが正直なところ。「五輪まで」とゴールテープをつくって、勝っても負けても引退だと思っていたのに引退しきれなかった。でも、若さには限界があって、競技(人生)には賞味期限があると思うんです。今は幸せなことに健全な心と体があるので、引退を見据えて競技の〝終活〟をやっている感じですね。
――どのような1年にしたい
植草 (昨年)1年で心の整理もできたし、もっと空手ときちんと向き合おうと思えた。やっぱり引退するときは有終の美を飾りたいし、納得できる形で世界選手権に臨みたいです。あとは世界連盟(WKF)のアスリート委員会に立候補しようと考えていて、本当に微力ですけど、自分で何かを変える力を持ちたいと思います。
――ユーチューブでノアの拳王とコラボしていた。引退後、プロレス界進出の可能性は
植草 拳王さんは自分に1割ぐらいの力しか出していないのに(技が)痛すぎるし、自分がやっても痛いんですよ…。自分には無理だと思いました(笑い)。見に行くのはいいですけど。
――では、今年はぜひプロレス観戦に
植草 そうですね。拳王さんにお誘いいただいたんですけど、大会と重なって行けなかったので。見たことない世界を見たり、体験するのは一番大事にしているマインドなので、いろいろ経験したいです。
☆うえくさ・あゆみ 1992年7月25日生まれ。千葉・八街市出身。小学3年で空手を始め〝空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ〟の愛称で親しまれる。全日本選手権は2015年の初優勝から18年まで4連覇。16年世界選手権初制覇。17年から3年連続でプレミアリーグ年間王者。21年東京五輪は1次リーグ敗退。9か月ぶりの復帰戦となった昨年5月のプレミアリーグ(ラバト)で優勝。168センチ。











