オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第116回は「釣れないんだね河童」だ。

 ある山中の池で、1人で釣りをしている時に突如、「釣れないんだね」と声をかけてくる妖怪が「釣れないんだね河童」である。なかなかユニークなネーミングだ。

 この妖怪に声をかけられると、その日一日は全く魚が釣れなくなる。なお、声質は少し甲高い子供のような声をしている。釣れないんだね河童とは言うが、河童の姿をしているかどうか不明である。それでも、なぜか常連の釣り仲間の間では、河童と言われているということは、そう感じさせる雰囲気を醸し出しているのだろうか。

 河童と釣りは関係が深い。江戸時代に盛んに語られた本所七不思議の一つ「おいてけ堀」は、堀で釣りをしている人に対して「(魚を)おいてけ、おいてけ」と呼びかける魔物であるが、この正体に関しては諸説唱えられている。河童、タヌキ、水神などがその正体として推論されている。

 他にも魚を獲ることを戒める妖怪として「岩魚坊主」、釣られたばかりの魚をほしがる徳島松茂町の妖怪「このしろババア」もいる。

 釣りという行為は、かつて仏教的解釈として殺生にあたるとされていた。つまり、釣りという趣味には、仏教に反する行為をする背徳の気持ちが込められていたのだ。そのため心の中に、魔物が発生する心理的余地があるわけである。