酒と健康に関する著書で知られ、数多くの医師を取材している酒ジャーナリストの葉石かおり氏が、自分も大好きな酒を元気に飲み続けるためのコツを探ります。
「どうやって家に帰ってきたんだろう?」
明け方、酒が残った頭で財布を開くと、ぐしゃっと突っ込んだタクシーの領収書が目に入る。帰宅した記憶がないほど泥酔していたのに、自宅への道を指示し、領収書までもらった自分に驚く。何なら飲んだ店の領収書まであるじゃないか。「どんだけしっかりしてんねん!」とエセ関西弁で自分に突っ込みを入れる二日酔いの朝の定例儀式。酒飲みの皆さまなら、きっと同じような経験をしているのではないだろうか? そう、酔っ払いはどんなに泥酔していても、不思議と家に帰れる。酒席の会話はきれいさっぱり忘れていても。
その秘密は脳の海馬によって定着した「長期記憶」にある。長期記憶とは、その名の通り、脳に長くとどまる記憶を指す。帰宅するまでの道のりは、日々同じ道を繰り返し通っているので、長期記憶として脳に固定されている。そのため、どんなに酔っ払っていても、脳からその記憶を取り出し、家に帰れるというワケだ。
反対に泥酔し、何度も同じ話をしたり、お金を払ったことを忘れてしまったりするのは、アルコールによって海馬の機能が低下するから。通常なら海馬は、それらのことを短期記憶として残し、長期記憶に変える。しかし、それができていないのは、短期記憶さえ残せないほど、飲み過ぎているということである。ちなみに私は泥酔すると、「赤いスイートピー」のさびだけをしつこく歌うようで、夫から激しく嫌がられている(オンチらしい)。もちろん、記憶はない。←胸を張って言うことではない。
まあ、こういったことをたまにはやらかしてもいいが、気をつけなくてはならないのが出張先である。店から宿泊先までの経路が長期記憶として定着していないからだ。これからは寒さが増す時期。泥酔して宿に帰れず、野宿なんてことにならないよう、飲み過ぎにはくれぐれも注意しよう。
はいし・かおり 酒ジャーナリスト、エッセイスト。「酒と健康」をテーマに医師を取材。γ―GTPの数値(14IU/L)が自慢。酔うとウクレレを弾いて歌うクセがある。自著「名医が教える飲酒の科学」はシリーズ累計17万部を超える。好きなお酒は日本酒とスパークリングワイン。












