東京人の特性を見るために、下町、山の手、そして三多摩地区に分けてみましょう。

 東京の下町といえば、映画でおなじみの「寅さん」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。でも、現在の下町にその面影を探そうとしても、簡単には見つかりません。映画の舞台となった柴又辺りでも、近所付き合いはかなりクールになり、人情味も変わってきているようです。

 いまだに下町の気風を残していると思われるのは、隅田川端の向島辺りでしょうか。米やみその貸し借りはもちろん、冠婚葬祭の付き合いなど、隣近所の関係は深く、この地域に住む人は家族同然といえるようです。

 この気質の代表格は落語家の立川談志かもしれません。ちょっとひねくれたような言動は「はにかみ」から来ているもので、素直に表現するのが照れくさいだけ。根は優しくて人情味があるのです。

 下町の路地を歩くと、家々の前に様々な花の鉢植えが並んでいます。密集地のために庭付きの家などは少なく、どうしても道路にはみ出てしまうわけですが、それよりも自分の生活圏に花々を置きたいという気持ちが強いのでしょう。その優しさや思いやりは、よそから入ってきた人に対しても同じです。開放的なので、付き合うと、とても愉快な関係になれます。

 ただし、下町っ子を理解するには、自分もおおらかな気持ちを持っていないと、意見がぶつかり合うでしょう。気の強さや言葉の荒っぽさ、そして気短な面もあって、何度か大ゲンカでもする覚悟がないと、本当に理解し合えないのかもしれません。

 ◆平川陽一 早稲田大学卒。主に歴史ミステリーの分野で活躍。著書に「世界遺産・封印されたミステリー」「戦争で読む日本の歴史地図」「日本列島 名城の謎」などがある。