AV出演被害防止・救済法(AV新法)が6月に公布・施行されたが、その影響で現場では混乱が続いている。そこでAV女優たちが法改正に向け、署名活動を行うなど立ち上がった。人気AV女優の天使(あまつか)もえ(28)もその一人で、「AV新法でデメリットの方がたくさん生まれている!」と訴えた。

 出演強要の被害をなくす狙いで施行されたAV新法だが、AV業界からは「これでは働きにくい!」と不満が噴出している。法律の内容は、契約から1か月間の撮影禁止、撮影終了から4か月間の公表禁止、公表から1年間は無条件に契約を解除できる、などだ。

 改正に向けた署名活動に参加した天使は、2014年にデビューした単体女優。AV新法について積極的に発信していることでも知られている。

 いったいAV新法によって働きづらくなった点とはどんなところなのか? 本紙の取材に天使は「今回の法律は男優さんにも適用されています。例えば男優さんの方で、新型コロナウイルスの濃厚接触などの理由で撮影できないとなった場合、今までなら別の男優さんに代えれば問題なく撮影できましたが、契約のやり直しが発生するので、これからは撮影ができなくなります」。

 契約から1か月間は撮影禁止なので男優の変更も簡単にはできない。つまり今まで以上に撮影が中止になりやすいのだ。単体女優は1か月の撮影が1本。何らかのトラブルで撮影が中止になったら撮影は翌月になるが…。

「翌月の撮影も確実にできるとは限りません。1回そういうループにはまってしまうと生活が立ち行かなくなってしまう。撮影のたびに『大丈夫かな』とハラハラすることになります」

 撮影がなくなると、もちろん収入もなくなる。撮影現場で働くのは女優と男優だけではなく、カメラスタッフやメーク担当もいる。天使のもとには「来月の仕事がなくなった」というスタッフらの苦境も伝わってきているという。

 さらにAV新法にある「撮影終了から4か月間の公表禁止」という項目も働きづらくさせる一因だ。

「作品の発売スケジュールもずらさないといけない状況です。いま8月なので、12月から冬にかけてかなり発売本数が減ってしまうかもしれません」

 今冬には、深刻な“AV不足”が起きかねないというのだ。

 撮影がなくなることで失われる収入の穴埋めを考える女優もいるだろう。

「ある女の子は同人AVの撮影依頼がSNSのDMですごく来るようになったと話していました。そっちに流れる女の子が増えるとトラブルも起きやすい。AV新法でデメリットの方がたくさん生まれている状況です」

 同人AVとは、一般人が制作するAVのこと。天使らが出演する女優の人権等に配慮された「適正AV」とは違うカテゴリーで、同人AVを介して世間を騒がす事件が起きたこともある。AV新法の対象ではあるが、同人AVにどこまで徹底されるかは不透明だ。

 改正を求める点は撮影の1か月前に契約、撮影から4か月公表できないなどの規制にある期間の短縮等だ。政治家へのアプローチも行う。
「議員さんを動かさないといけないので、そのためにはみんながAV新法に対して思いを抱いていると伝えなくてはいけない。署名は10万人分を目標にしています」

 この思い、果たして届くのか…。