人気漫画家の藤子不二雄Aさん(本名・安孫子素雄=あびこ・もとお)が7日、川崎市の自宅で死去したことが分かった。88歳だった。「忍者ハットリくん」「怪物くん」「笑ゥせぇるすまん」など国民的漫画を世に送り出した。知られざる素顔とは――。

 藤子不二雄Aさんと藤子・F・不二雄さん。作風だと藤子Aさんが陰、藤子Fさんが陽のイメージだが、それぞれの性格はその真逆で対照的だった。

「子供向けの楽しい作品が多いFさんは、実は気難しい先生でね。なじみの編集者じゃないと会ってくれないほど、極度の人見知りだった。逆にAさんは、大人向けのダークな作品ばかり描いてるのにすごく明るくて、社交的で、友人も多かった」と振り返るのは、さる漫画編集者だ。

 2人がコンビを解消したのは88年。「それ以前を知る世代の人に聞くと、例えば出版関係者が集まる飲み会に来るのはAさんばかりだったそう。取っつきにくいFさんに対し、Aさんは割と若い編集者でも笑顔で応対してくれる先生で有名だった」という。

 聞けば、藤子Aさんは若いころ哲学の本を読み込んでいたらしく、「哲学的な話が好きだった。人生とはこうだとか、教訓めいたことが話の所々で出てくるから面白かった」。代表作「笑ゥせぇるすまん」のほか「魔太郎がくる!!」などは、そんな藤子Aさんの真骨頂だろう。

「『恐怖や不気味さと笑いは紙一重。実は表裏一体なんだ』というような話もしていた。楳図かずお先生がホラー漫画家なのに『まことちゃん』を描いてることを例に挙げたりしてね。あと多趣味だったから、誰とでも話が合う。Aさんを知る誰もが『話していて楽しい人だった』と口をそろえるはずだよ」と同編集者は故人をしのんだ。