悪事がバレバレに? ロシアのウクライナ侵攻は24日で1か月となった。ウクライナの頑強な抵抗で、当初描いた戦果を得ることができないロシアだが、プーチン大統領の頭に“撤退”の2文字はないようだ。そんな中、大統領特別代表を務めていたアナトリー・チュバイス元第1副首相が辞任したと海外メディアが一斉に報じた。この行動が意味するものとはいったい何なのか…。専門家に聞いた。
インタファクス通信は23日、チュバイス氏が辞任したと報じた。ブルームバーグ通信によると、ウクライナ侵攻に同意できないことが理由だという。侵攻に反対するプーチン政権高官の辞任は初で、すでにロシアを出国し、妻とともにトルコにいるとの情報もある。
チュバイス氏はソ連崩壊後にロシアの市場経済移行を主導し、エリツィン政権下で第1副首相や大統領府長官を歴任。プーチン政権下で国営電力企業社長や、リベラル系政党「右派連合」の幹部も務めた。2020年末からは大統領特別代表に就任し、国際機関との協力を担当していた。
戦争の長期化でロシア国内でも反戦機運が高まり、言論統制など締め付けを強化する中で起きた政権高官の辞任劇。これは政権の内部崩壊の予兆なのか。旧KGBなど独自のネットワークでロシア事情に詳しい元警視庁公安部出身で日本安全保障・危機管理学会インテリジェンス部会長の北芝健氏はこう話す。
「チュバイスは大統領特別代表を務めていましたが、プーチンの手下ではなくエリツィンの手下。08年の大統領選では(当局が立候補者から除外した)ミハイル・カシヤノフ元首相を応援している。05年にはチュバイスの車が銃撃される事件もあって、プーチン派の仕業ではないかとみられている。プーチンとしては“使えるヤツ”ということで大統領特使などもやらせていたが、信頼は置いていない」
チュバイス氏はプーチン政権の要職にはあったものの、もともと反プーチン色が強かったため、辞任が即、政権の転覆につながるような影響はないという。政権幹部の辞任の連鎖につながる可能性も、プーチン氏の監視の目が強化されることにより低くなりそうだ。
一方で、西側諸国は長年ロシアの政治・経済の中枢に身を置いてきたチュバイス氏が持つ情報に期待しているという。
「ロシアの内部事情をその目で見てきたのはもちろん、カシヤノフ陣営でプーチンのことを調べ尽くしたといわれている。チュバイスほどの地位と年齢であれば、すべてが読める。国外に逃れて、それらを暴露するのをプーチンは恐れている」
まずはカネだ。
「オリガルヒ(新興財閥)の長として、プーチン政権とオリガルヒとのカネの動きも把握しており、汚職が暴露される」
続いては女性関係だ。元新体操五輪金メダリストのアリーナ・カバエワ氏が愛人といわれているが、「とにかく女関係が派手。アリーナだけではなく、愛人はあちこちにいる。それが全部バラされる」と北芝氏。
何より大きいのは健康状態にまつわる情報だ。プーチン氏は、手の震えからパーキンソン病の可能性を指摘されたり、演説に登場した際の映像で足を引きずっていたりしたことから、心臓の病気を抱えカテーテル治療の影響ではないかと分析されている。
一国の長の健康状態は機密中の機密事項とされるだけに「生きているうちにウクライナ侵攻をやったという読みもあり、チュバイスがプーチンの脳や心臓の病気を証言すれば、西側諸国はプーチン氏を攻撃する格好の材料になり得る」。
チュバイス氏がこれらに関する情報を暴露すれば、捜査機関によって、ロシア関係者だけでなく西側諸国のロシアへの協力者も丸裸にされる可能性もあり、北芝氏は「プーチンの牙城が崩れる序章になり得る」という。即効性はなくとも、ボディーブローのように効いてきそうだ。












