【石原結實 食の金言】「俎上」とは「まな板の上」という意味で「俎上の鯉」とは「まな板の上の鯉」のこと。鯉を料理するためにまな板の上に載せると「切るなら切ってみよ」とばかりにじっとして動かなくなる、という。

 その様が潔い言動を尊ぶ武士道精神に通じるということで「俎上の鯉」というのは、「命に危険が及ぶような大変な局面に遭遇しても肝のすわった行動をとること」を意味する(運命を握られ、結果を待つのみだという意味でも多く用いられるが)。

 その他「俎上」が用いられる句には

「俎上に載せる」=話題として取り上げて、ディスカッションする

「俎上の魚(ウオ)」=相手に生殺の権を握られ、相手の思い通りになるより仕方のない運命にある者

 などがある。

 鯉は水から揚げても数時間生きているほど生命力が強いので、精神力も強いのだろう。よって、まな板の上に載せられても、じたばたしないのではないかと思われる。

 鯉は川魚の代表で、今や世界中の河川、湖に生棲しているが、もともと中央アジアの原産。

 鯉にはタンパク質や脂肪が豊富に含まれ、A、B1、B2などのビタミン、カルシウム、鉄などのミネラルも多く含まれる為、強壮・強精剤とされている。

 中国ではから揚げにして、ドナウ川が流れる東欧ではバターで炒めるムニエルにして、日本では夏は「あらい」、冬は「コイコク」(鯉をぶつ切りにして内臓も骨も一緒に味噌で煮込んで作る)にして食べられる。

 プロ野球の「広島カープ(Carp=鯉)」は、「鯉の精神力・強壮力にあやかって選手たちが勇猛な戦いをしてほしい」という意味も込められているのかもしれない。

 ◆石原結實(いしはら・ゆうみ)1948年、長崎市生まれ。医学博士。イシハラクリニック院長として漢方薬と自然療法によるユニークな治療法を実践するかたわら、静岡・伊豆でニンジンジュース断食施設の運営を行う。著書は300冊超でベストセラー多数。最新作は「コロナは恐くない 恐いのはあなたの『血の汚れ』だ」(青萠堂)。