勝利のスパイラルに突入だ。テニスの全豪オープン女子シングルス準々決勝(16日、メルボルン)、世界ランキング3位の大坂なおみ(23=日清食品)が同71位の謝淑薇(35=台湾)に6―2、6―2のストレートで圧勝。ベスト4に進出し、自身4回目の4大大会制覇へ「マジック2」とした。心身ともに充実の大坂は一戦ごとに強さを増しているが、この日の勝利の裏には4回戦の“ミラクル”が生かされていた。


 大坂は試合前、技巧派の相手を「予測できないプレー」と警戒していたが、終わってみれば完勝。計7本のサービスエースに加えて、試合前に練習したリターンも光った。フォアのウイナー、バックのダウンザラインも効果的に決まり、わずか1時間6分で“クセ者”を退治。試合後は「落ち着いて戦うことができた。プレーに満足」と笑顔で話した。

 これで昨年から続く公式戦の連勝を「19」(試合前棄権を除く)に伸ばし、4大大会の準々決勝以降は無傷の10連勝。4回戦を突破すればV率100%という好データもあるが、プレー面でも死角が見当たらない。DAZNテニス中継の解説者・佐藤武文氏(49)は「相手の謝選手は少し“ガス欠”状態でしたが、大坂選手は変に力むことがなかった。フィジカルで勝っていましたね」と分析した。

 また、頭脳派で知られるコーチのウィム・フィセッテ氏(40=ベルギー)の支えも大きい。試合中にメモを走らせるシーンはおなじみだが、佐藤氏は「実戦で得た自分の感性にデータが加わった。究極のハイブリッドです。大坂陣営が取り組んできたことが正しかったと証明できました」と絶賛した。

 さらにメンタルの安定も目を見張るものがある。試合を重ねるごとに精神力が磨かれているが、その象徴的なシーンが第2セットの第8ゲームにあった。40―15とマッチポイントを握りながら40―40に追い付かれてデュース。相手のアドバンテージから3連続ポイントを奪って試合を決めたのだ。「勝利が目の前でも慌てなかった。間違いなく、あの経験が生きましたね」(佐藤氏)

 同14位のガルビネ・ムグルサ(27=スペイン)に2度のマッチポイントを握られ、崖っぷちから大逆転勝利を飾った2日前の4回戦。スポーツキャスターの松岡修造氏(53)も「奇跡に近い勝ち」と表現したが、佐藤氏は「あれで逆に“明日は我が身”という怖さを知った。自分がマッチポイントを握っても勝ちたい気持ちを抑え、いつものプレーができたのです」と話す。

 自らの忍耐力でもぎ取った勝利が、さらなる白星を生んだ。“確変状態”に入った大坂は、もう誰にも止められない。