【全米OP制覇】大坂なおみ〝抗議マスク〟が五輪憲章を変える!

2020年09月14日 05時15分

差別抗議マスクが話題になった大坂なおみ(ロイター=USA TODAY Sports)

 これは「革命」だ。日本女子テニス界のエース、大坂なおみ(22=日清食品)が4大大会「全米オープン」(ニューヨーク)で2年ぶり2度目の優勝を果たした。今大会ではコート外の「人権活動」にも注目が集まり、黒人被害者の名前が入った日替わりの〝人種差別抗議マスク〟は世界中に波紋を広げた。批判も噴出した中で、今回の見事な優勝によってプロパガンダは大成功に終わったが、100年の近代五輪史さえも大きく変える可能性が高まっている。

 手のつけられない強さだった。初優勝した2年前からはるかに強くなったメンタル、進化したフットワーク。心技体がハイレベルで揃い、決勝(12日=日本時間13日)では世界ランキング27位の〝最恐女王〟ビクトリア・アザレンカ(31=ベラルーシ)を1―6、6―3、6―3の逆転で下して栄冠を手にした。

 一方、今大会では優勝以上に「人権運動」がクローズアップされた。大坂は米国内で過熱する「BLACK LIVES MATTER(BLM=黒人の命も大事だ)」運動に積極的に参加。人種差別への抗議として前哨戦「ウエスタン&サザン・オープン」ではボイコットも示唆した。今大会は1回戦から決勝まで7試合、7種類の黒人被害者の名前入り〝抗議マスク〟を用意。「スポーツに政治を持ち込むな」との批判も浴びたが、プロパガンダを貫いて見事に全7枚披露のコンプリートを達成してみせた。

 この一連の言動が今、大きな「山」を動かそうとしている。本紙既報通り、テニスの4大大会や五輪では特定の思想を喧伝する行為は禁止(特例の今大会を除く)。特に五輪では厳しく禁じられ、1968年メキシコ五輪の陸上表彰式で米国2選手が黒人差別の抗議として黒い手袋をはめた拳を突き上げ、追放処分となったのは有名な話。その基準となる「五輪憲章」の第50条は以下のように記されている。

「オリンピックの用地、競技会場、またはその他の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、あるいは政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許可されない」

 ただ、時代は移り変わり、今年に入って前述の追放処分を受けたジョン・カーロス氏が「50条の撤廃」を国際オリンピック委員会(IOC)に要請。今月1日には2028年ロス五輪組織委員会のケーシー・ワッサーマン会長が憲章改正を訴える文書をIOCのトーマス・バッハ会長(66)に送付した。ワッサーマン氏は「人種差別に反対する発言が政治的だとは思わない」と述べており、米国内のBLM運動も手伝って五輪での抗議行為の解禁ムードが高まっている。そんな折、大坂がマスクと優勝で強烈なインパクトを与えた。これにより撤廃の流れが加速するのは間違いない。

 実際に大坂の行為の容認論は内外から出ている。五輪競技団体のあるアスリート委員は「大坂選手の行為は五輪の理念でもある平等や公平を後押しするもの。特定の政治活動とはワケが違うので許されるべき」ときっぱり言い切った。

 テニスの国体優勝経験を持つ元衆院議員でタレントの杉村太蔵氏(41)も「スポーツ選手が大会などで人類共通の課題に立ち向かうのは決して悪いことではない」と前置きした上で、五輪憲章に対し「五輪の本来の目的は世界平和でしょ? それなら人種差別の抗議は究極のプロパガンダのはず。人種差別廃止を訴える大坂さんの行動が五輪憲章で違反になるなんてあり得ない。例えば北京五輪で中国が尖閣諸島はオレらのものだって主張するのはおかしいですが、今回の主張は全く問題ない」と主張した。

 大坂が所属する日清食品は「彼女の個人的な言動にはコメントする立場にない」、日本テニス協会幹部も「協会としては発言できない」と慎重。センシティブな問題だけに今後も賛否が飛び交いそうだが、すでに大坂は来年夏に延期された東京五輪の出場権を得ている。100年以上の歴史を誇る五輪憲章に風穴をあけ、五輪の舞台で堂々と抗議行動をする歴史的瞬間が見られるかもしれない。