【ブリスベン国際】大坂なおみが五輪イヤーの幕開けで白星発進 新コーチのクビ守った!

2020年01月08日 16時30分

 2020年の幕開けとともに、女子テニスの世界ランキング4位・大坂なおみ(22=日清食品)の勝負の一年が始まった。目標の東京五輪金メダルへ向け、負けられない今年初戦のブリスベン国際シングルス1回戦(7日、オーストラリア・ブリスベン)を苦しみながら勝利。昨年末に就任した新コーチ、ウィム・フィセッテ氏(39=ベルギー)との初陣で大きな1勝となったが、助けてもらうはずのコーチを自らのプレーで救ったというから驚きだ。

 女子ツアー開幕戦は大坂にとってあらゆる意味で重要だ。東京五輪イヤー初戦であり、連覇を狙う4大大会第1戦の全豪オープン(20日開幕、メルボルン)のステップでもある。さらに今大会はフィセッテ氏との船出。昨年はコーチを2度変更し、その上で不可解な契約解消もあっただけに新コーチとの今後の関係性を考えても、初戦敗退だけは絶対に許されない。

 そんなプレッシャーの中、世界23位マリア・サカリ(24=ギリシャ)を6―2、6―7(4―7)、6―3と苦戦しながら撃破。この一戦を見守ったDAZNテニス中継の解説者・佐藤武文氏(48)は「大坂選手がコーチの首を守りましたね」と意外な指摘だ。

 ツアーコーチ経験もある佐藤氏は「コーチとしては、就任最初の試合は脇汗があふれ、胃が痛くなる。たかが1試合ですが、初戦で負けると空気が悪くなるし、信頼が崩れてしまう」とコーチ目線で切実に語る。五輪イヤーの初頭から関係性にヒビが入る危険性もあったが、それを食い止めたのが大坂自身だった。象徴的なシーンがあったという。

 1回戦でフィセッテ氏は大坂に「無理をしないバックハンド」を命じていた。「勝負どころではネット上部スレスレのハードヒットを狙っていいけど、ニュートラルな状況でのラリー、厳しい体勢や無理なポジションからはスピン量を多めにし、深い位置へのバックを打つ戦術です」(佐藤氏)

 大坂はアドバイスを忠実に守った。強打したい気持ちを抑え、ミスを最小限にとどめて第1セットを奪取。第2セットの途中に初めてオンコートコーチングを要求した大坂は、フィセッテ氏から「約束をちゃんと守っている」「やりたいことができている」と声をかけられており、試合後は「第1セットはやりたいことができた」と振り返っている。

 しかし直後にフィセッテ氏から出た「クロスを多めに」という指示で、いささかの狂いが生じた可能性がある。それまでミスのなかったバックが乱れてネットに引っかかり、第2セットを落とすとファイナルセットも0―2と窮地に。ここからが佐藤氏が好評価するポイントだ。第3ゲームで高いバックショットを1本決めると、ガラっと変わったという。

「あのショットでコーチとの約束を思い出し、立ち直りました。コーチを呼ばず、自分で気づいて修正したことが勝因。心の成長を感じました」

 フィセッテ氏はベンチで冷や汗をかいたことだろう。大坂クラスになるとコーチ契約も破格だ。いきなりクビを切られる恐れもあった中で、自らピンチを救った大坂は、これ以上ない“コーチ孝行”と言える。