競泳男子200メートル個人メドレー準決勝(29日)で、萩野公介(26=ブリヂストン)が1分57秒47で全体6位に入り、1分56秒86で全体3位の瀬戸大也(27=TEAM DAIYA)とともに決勝進出を決めた。

 萩野は前回の2016年リオ五輪で400メートル個人メドレーの金を含む3つのメダルを獲得したが、一昨年に原因不明の不調で無期限の休養を強いられた。復帰後もタイムが伸びず、苦しい時期が続いた。この日は萩野らしい伸びのある泳ぎを披露。「五輪の神様が力を貸してくれているんだと思う。幸せ者だなって思った」と涙ながらに語った。

 涙の裏には特別な思いがあった。金メダルが期待されながら2種目で予選落ちとなった瀬戸も、この日は好タイムをマーク。幼少期からの〝戦友〟との直接対決が決まり「やっと大也らしい泳ぎをしてくれて、いつもの大也の実力を見ることができてうれしかった。決勝で一緒に泳げるのって神様がくれた贈りもの以外に考えられない」と声を震わせた。

 一時は五輪出場が絶望視されていた萩野だが、ここへきて復調の兆し。バルセロナ五輪競泳女子200メートル平泳ぎ金メダルの岩崎恭子氏は「世間的な考えだと、五輪なんて行って当然だというふうに思われるかもしれないが、いろんな葛藤があったと思う。でも、今回決勝に進めたことで、やっぱり安心した部分もあったと思うし、そこが涙につながったんじゃないかな。予選からいい感じで泳げていた。残りラスト1本なので、自分の今持っているものを全部出し切ってくれたら」とエールを送った。

 一方の瀬戸は「公介と世界の舞台で戦うのも、この後、何回あるか分からない。1本1本を大切にして、公介と日の丸2つを背負って、決勝で戦えることに誇りを持って、最後まで全力で泳ぎたい」。2人の物語に新たなページが刻まれた。