【どうなる?東京五輪パラリンピック(40)】宿命のライバルの決着戦はいつになるのか。全日本柔道連盟は東京五輪の1年延期に伴い、すでに内定している日本代表13選手について権利維持の方針を固めたが、唯一代表が決まっていない男子66キロ級は先送りになった。同級では丸山城志郎(26=ミキハウス)と阿部一二三(22=パーク24)の新旧世界王者が代表の座を激しく争うも、新型コロナウイルス禍の影響で試合開催のめどは立っていない。来年4月まで決着戦が延びる可能性もある中で、“元暴走王”の見解は――。

 延び延びになっていた代表権の処遇は、ようやくそのままスライドが決まった。3月24日に五輪延期が決定した直後には再選考を求める声もあったが、本紙が報じてきたように判断基準になる国際試合の開催が見込めない状況では選び直しもできない。このため、15日の強化委員会と常務理事会では全会一致で代表権維持の方針で固まったという。

 ただ、もう一つの焦点だった男子66キロ級の選考方法に関しては、別途選考会を設けるという“白紙決着”となった。もともと丸山と阿部の最終決戦は、予定された4月の全日本選抜体重別が延期になっていた。全柔連の中里壮也専務理事は「来年(4月)の選抜(体重別)まで延びる可能性もある」と悩ましげに話し、金野潤強化委員長(53)も「社会情勢と全柔連の医科学委員会の決定も参考にしながら稽古期間を確保して、2人の戦いを計画したい。不公平感が出ないようセッティングしたい」と語った。ワンマッチの代表決定戦も選択肢に入れ、実施日の3か月前までに決定する方針だという。

 終わりの見えないコロナ禍により、2人の激しい争いの先行きも不透明なままに…。ただ、バルセロナ五輪95キロ超級銀メダルで“元暴走王”の小川直也氏(52)は「まさにサバイバルだけど、来年までの持ち越しは妥当」と理解を示す。「見えない敵と戦っているから何も言えないし、誰もわかんない。でも間違いなく、今年中に試合なんか絶対無理だからさ。周りが良くなったから『はい、スタート』ってわけにはいかないよ」

 2人は改めて最終決戦に向けて準備期間を取り計画を立てて稽古を積む必要がある一方で、「密」が避けられないコンタクト競技である柔道ではその稽古ができない期間がまだまだ続くことも覚悟しなければいけないという。

 丸山と阿部は居住地域も関東と関西に分かれており、練習再開時期に差が出ることも考えられるが、小川氏は「いろいろ不公平が生じないように、お互いがいい状況になるまで待って(試合日程を)決めるのが一番、公平感がある」と強調。不公平感が出ないためなら、来年4月の全日本選抜体重別まで“決着戦”が延びても仕方がないと言い「もし1年後になったらその試合が1年ぶりになるっていうのも大変だけど、すべてが決まってスッキリするまでは試練だよ」と力を込めた。

 コロナという新たな敵と長期間の緊張状態に打ち勝たなければ、悲願の代表切符は手に入らない。“遅咲きの苦労人”丸山と“怪物”阿部の戦いが過酷さを増し、まだまだ続くことだけは確かだ。