北京五輪の開幕まで2週間余りとなった。時速140キロで滑走するボブスレーは「氷上のF1」と言われ、冬季五輪でもおなじみのソリ競技だ。日本では競技人口が少なく五輪出場のチャンスがあるため、他競技から冬季限定で転向する“二刀流アスリート”も多い。ボブスレーの不思議な魅力に迫るべく、日本連盟の強化責任者で長野とソルトレークシティーの五輪2大会に出場した大石博暁氏に競技への素朴な疑問を聞いた。

 ――基本的なルールは

 大石氏(以下、大石)体重とソリの合計重量制限は男子2人乗り390キロ、4人乗り630キロ、女子2人乗り340キロで、ソリの最低重量は170キロ。重い方が加速がつくので有利とされています。一番前で操作する人がパイロット、後ろに乗る人がブレーカー。全員でソリを押して加速させて乗り込み、4本の合計タイムで争われます。距離はコースによって違いますが、北京五輪は全長1・975キロです。

 ――競技の魅力や見どころは

 大石 ソリを押して乗り込む場面は非常にダイナミックかつ重要です。減速させずに忍者のようにサササッと乗り込むのはものすごいテクニックが必要。100分の1秒の争いなので、スタートで失敗すると大きくタイムロスしてしまいます。滑走中はパイロットのテクニックの見せ場。いかに壁に接触せずに操作するかが勝負の分かれ目です。また、観客は手を伸ばせば届くほど至近のため、目の前を一瞬で通り過ぎるので迫力満点。ただ、乗っている方は大変です。時速約140キロなので、転倒すると体が氷にこすりつけられてヤケドをすることもありますね。

 ――どんな能力が選手に求められるのか

 大石 パイロットは動体視力とソリの挙動を感じる能力。F1と違ってコースは平面でないので、ソリが真横になることもあり、ちょっと傾いただけでタイムをロスする。その微妙で繊細な動きを感じる能力が重要なんです。ブレーカーはとにかく足が速くてパワー系です。よく誤解されますが、ソリに乗ったら体重移動をする必要はなく、とにかくじっとして動かないことが大事です。

 ――今から日本代表になれるか

 大石 4年後の五輪なら十分に間に合います。ボブスレーは17歳以下は乗れないため、幼少期から競技を経験している人が存在しません(2021年の国内競技人口は20人)。パイロットは高い技術が必要なので育成に5年以上かかりますが、ブレーカーは体重があって足が速く、ソリを効率よく押せる能力があれば競技歴半年でも五輪出場は可能です。

 ――他競技から挑戦する選手もいる

 大石 実際に陸上100メートルや投てきの有望選手がボブスレーと二刀流として活躍したケースもあり、ハンマー投げ五輪金メダルの室伏広治さん(現スポーツ庁長官)も現役時代にセレクションに参加。ダントツの成績でしたが、本人が辞退したので五輪は出場しませんでした。アメフトで活躍中の栗原嵩選手はW杯に参戦しました。

 ――日本が五輪でメダルを取る可能性は
 大石 今後、各スポーツ界で活躍する選手が“ドリームジャパン”を結成したら(現在招致を目指している)30年札幌五輪のメダルも夢ではありません。